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零の音

瀬対ユウキによる【グローランサー シリーズ】中心非公式ファンblogです。

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AVE小説【砂漠の姫君】

AVE小説【砂漠の姫君】

M vs C のドクトニです。
好きなモノを詰め込みたい主義。
此処の2人で書くなら次はA.I.M.ブレラあたりのお話もいいなぁ…と思う日々。


『続きを読む(↓)』からどうぞ。




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【砂漠の姫君】



「靴に砂が入った…」

不満気にぽそりと呟いた男に私は微かに笑みを浮かべた。“非戦闘員”のスーツで来るからだ。と暗に伝えれば彼はさらりと砂を掬い上げて私の足元へと砂を放り投げてくる。可愛い悪戯だが魔術師である私には通用しない。ふわりとマントを浮遊させて砂を避ければ、むすりと唇を尖らせ彼は拗ねた表情をみせる。避けるなと訴えるその瞳はお揃いを求める甘い恋人だ。求められたならば応えなければならない。肩から浮遊マントを外し、再び砂漠へと足をつける。

「ほら、トニー。」

手を差し出して彼の体を浮遊するマントに腰掛けさせてやる。浮いた足下から靴を外し、パタパタと砂を出してやればすらりと伸びた足先が私の視界へと伸びてくる。ふむ。と考えて私は2つの靴を指に引っ掛けたまま歩き出した。

「おい、スティーヴン!」

浮遊マントに腰掛けたまま声を上げたトニーに私は微笑む。

「靴のまま歩けばまた砂が入るだろう?お姫様のままでいてくれれば問題はない。」

かあと頬を赤く染めたトニーが小さく「スーツを着てくるんだった…」と漏らすが今さら後悔しても遅い。砂漠の姫君を連れてバルカンダの砂を私は踏みしめて歩いて行く。じりじりと照らす太陽。空にぷかりと青い気球が浮かぶ。チカリ、チカリと気球から飛ばされる光の信号が此方に合図を送り私は咄嗟に転移魔法を地面へと繰り出した。

「スティーヴン!」

同じく信号に気付いたトニーが叫び、私はトニーの体を浮遊マントごと魔法陣へと落とし込んだ。私自身も魔法陣へと飛び込もうとすれば地面から湧き上がるように地表が揺れ、ザラザラと流れ動く砂の波に呑まれた足下が唐突に浮き上がっる。
嗚呼、これはマズイ…!
巨体に押し上げられた体が不安定に揺れる。大きく視界が揺れ体が落ちてゆく。砂の先端から浮かび上がってきた巨大な螺旋状のツノに舌打ちしながら、私は転移魔法陣を自らの落下地点へと操り出した。

「すまない!」
「スティーヴン!」

転移魔法陣から出ると同時に声を掛け合ったトニーの体を押し倒して私はトニーの上に覆い被さる。ゴンと何かにぶつかる鈍い音が聞こえて私は腕を伸ばした。

「出血はない。軽度の打撲だ。」

頭を打ったであろうトニーの頭をひと通り撫でて伝えてやれば、横腹をばしりと叩かれた。「いいからはやく退いてくれ」と絞るようなか細い声を出したトニーは私の所為で砂まみれだ。転移先である狭い気球の内部では突然に2人の客人が現れてだろう操縦士達は軽いパニックをおこしている。
「教えてくれて助かった。乗車賃は後で払う。」
身を起こし操縦士に告げ砂漠を見れば、巨大な怪物ダレン・モーランが砂の海を泳ぐように暴れ進んで行く。進行方向を見れば、視界に映る美しい街並み。其処へ向けてダレン・モーランが巨大な咆哮をあげた。
「あっちはバルカンダの方角だろう?モンスターハンターと龍撃船は?」
「モンスターハンターならティ・チャラ国王の側に居るはずだ。すぐに出撃出来る。バルカンダへの連絡は?」
「あんたらの後に知らせた!」
「速いぞ!おい、間に合うのか!このままだと街が!」
騒つく気球内部の人々へと声をあげて聞き、トニーへと顔を向ける。
「“匿す”前で良かったな。」
その言葉にトニーの掌の中にある“匣”を苦虫を噛み潰す想いで見据えて私は溜息を吐きだした。ダレン・モーランの巨大な咆哮を警鐘に、バルカンダから大きな砂漠船が何隻も飛び出してゆく。風を受け真っ白な帆を張る龍撃船の先頭には紅い竜の鎧を纏った女性 モンスターハンターが立ち臨戦態勢に入っている。その横には漆黒のスーツを身に付けた国王ブラックパンサーの姿も。
「到達までに時間がない。ストーンを。」
匣からコロリと掌に転がったインフィニティストーンを握り締めれば、ストーンは眩い輝きを放ち、砂漠の渇いた空に浮いた。インフィニティサージ。ストーンの力が溢れ周囲の空間を支配する。
「奴を此方に“引き寄せる”。」
転移魔法と組み合わせ、巨大なダレン・モーランの肉体を街から離れた私達のいる場所へと引きずり込む。轟々と蠢めく力に気球の操縦士達が悲鳴をあげる。ミシリミシリと気球のバスケットを支える支柱が嫌な音を立てて、私の集中力を削いだ。危険な事をしている自覚がある。離れていたダレン・モーランの巨体が瞬時に目前に迫れば、ぐるりと向きを変えたその眼が私達を捉える。
「注意は逸らした。が、危険だ!魔法陣の中へ!」
転移の魔法をもう一度。床へと広げれば慌てる操縦士達が次々と飛び込んでゆく。最後の一人だ。トニーの肩を掴み逃がそうとした、その瞬間に私の頭が温かな肉体に包まれる。続く爆発音のような咆哮に私達の体が吹き飛ばされた。既に悲鳴をあげていたバスケットの支柱はボキリと折れ曲がり、燃える炎が布を焼いた。
「トニー…」
私の体を包み込んだのはトニーだ。ダレン・モーランの咆哮がくると分かって私を護ったのだろう。ぐったりと私の体に凭れて動かないトニーに嫌な汗が流れた。燃え移り急速に飛行高度を下げてゆく気球にとどめをさすように、ダレン・モーランの肉体から巨大な岩石が飛んでくる。逃げなければ…!魔法陣を繰り出してトニーの身体ごと其処へと飛び込んだ。

酷い痛みだ。ゴツゴツとした岩壁に全身を叩きつけながら逃れた攻撃に安堵の息を吐き出す。城壁の上から落下地点を見据えれば小さな気球は岩石に撃墜されすでに燃え尽き砂漠の一部となっている。迎撃態勢に入った龍撃船がダレン・モーランの咆哮を止めるように龍撃砲を鳴らした。抱えたトニーの身体を抱きなおし、その頬を小さく撫ぜる。
「トニー…トニー」
優しく名を呼べばふるりと動いた睫毛が私を捉えてやわらかに微笑んだ。パラパラと髪から滑り落ちる砂にも映えるトニーの瞳は美しかった。
「なんだ?キスするのか?」
大怪我をしていないかと心配する人の気も知らずに笑うトニーの頬を多少強引に引き寄せる。お互いの髭が混じり合う微かな痛み。触れ合わせた唇の隙間から舌を捻じ込めば腔内から血と砂の味がして、すぐに唇を引き離した。
「砂まみれはムードがないな。」
舌についた砂を吐き出しながらトニーを見ればまるで幽霊でも見たかのような表情をして私を見据えている。
「キス…したのか…」
「嗚呼。した。」
だが、それがどうした?と毅然とした態度で告げてみせる。いまさら隠す必要もないだろう。惚れているから互いに傍に居るのだ。
「ムードがないな。」
「それは私が先に言った。」
ぐずりと顎髭を撫でるトニーの頬が微かに赤い。嗚呼、本当にいまさらだな。両の指でトニーの髭についた砂を念入りに払ってやる。もう1度。触れ合わせた唇と舌の隙間にやはり砂の味が混ざる。
「影の功労者は退散しよう。
あの2人なら撃退できる筈だ。」
「全身砂だらけだ。シャワーを浴びたい…」
パラパラと砂を手で払うトニーの言葉に欲情がわき、私は抑えきれない笑みを浮かべた。浮遊マントを肩から外して砂を払い、トニーの身体をその上に優しく乗せる。
「お姫様扱いは…」
「されたくないなら“スーツ”を着るべきだ。」
首筋に唇を寄せて告げればトニーの肌がほんのりと色づいてゆく。お姫様を魔法の絨毯に座らせる。そうして連れ去るのは砂漠の城ではなく魔法の城だが、それも悪くはないだろう?

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