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零の音

瀬対ユウキによる【グローランサー シリーズ】中心非公式ファンblogです。

AVENGERS小説『テディベア

AVENGERS小説『テディベア』

フューチャーファイトでゾンビーズコスチュームが追加された事による、ゾンビーズ社長のコスチュームもあれば良かったのになぁ…から妄想が広がったお話です。
ウル→トニ←キャプ。
ゾンビーズに内容有りなので少しグロめ。

『追記を読む(↓)』からどうぞ。



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S.H.I.E.L.Dラボにある次元移動装置は緩やかに稼働していた。反物質を使用して次元の狭間を越え、世界を救う為にヒーロー達は日々活躍している。そんな次元移動装置に光が集まり、異世界への次元の狭間が開く。と同時にカシャンと金属が床を擦る音が響き渡った。左脚をズルズルと引きずり、引き千切られたコードから火花を散らし、捥がれた片腕に小さな“それ”を大事に抱き締めて、帰還したウルトロンはS.H.I.E.L.Dのラボを歩み出した。ボロボロの機体とは違いウルトロンは上機嫌で、抱き締めた“それ”にテディベアを抱き締める子供のように唇を寄せる。

「お帰り。ウルトロン…」
「随分とやられたな?出掛ける前と機体が違うぞ。マーク3のボディはどうした?その姿ではまるでアイアンレギオンだ。まったく、誰がお前を修理すると…」

ウルトロンの帰還をジョカスタから聞き、ラボに降りてきたスティーブ・ロジャースとトニー・スタークの声が尻切れ調子になる。数多くのヒーローとヴィランを束ねる軍団の中核である2人の視線はウルトロンが抱き締めた“それ”に釘付けだ。

『父上。帰還を待っていてくださるとは慈悲深いです。
次元の狭間の先に居たキャプテン・アメリカのヴィラン連合軍に苦戦を強いられたのでマーク3のボディは棄てました。父上が御察しのとおりアイアンレギオンの機体を借りたのですが傷みが激しい。危うく大事な“戦利品”を落とすところでした。』

言い終わると同時に鼻歌を歌いはじめ、抱き締めた“それ”の頭部をウルトロンは肘までしかない腕で優しく撫でる。キラキラと輝く紅い金属面には戦闘で飛び散ったのであろうドス黒い血がべたりと附着していた。その光景にトニーの眉間にはみるみる皺が刻まれ、小刻みに震える唇を噛み締めてトニーはウルトロンから視線を逸らした。そんな彼を庇うようにスティーブは一歩だけ前に出ると腕に装着した盾に手を触れウルトロンに問い掛ける。

「ウルトロン。何故、別次元のアイアンマンを殺して帰還した?」

冷たく緊張感に張り詰めた声がラボ内に響いた。ウルトロンが持ち帰った“戦利品”である“それ”は腹より下の下半身を完全に無くしたアイアンマンで、ウルトロンの腕の中で完全に力をなくし、だらりと血に塗れた腕を垂らしている。到底生きている状態には思えなかった。別次元への協力こそあれど、世界の為に戦う同志を殺すなどあってはならない。それが此の世界のスティーブ・ロジャースつまりはキャプテン・アメリカの方針であり、信念だった。スティーブの敵意を込めた鋭い眼差しにウルトロンの唇が薄く、だがしかし確実に笑みを浮かばせる。

『殺してなどいない。私が父上を殺すと?嫉妬に駆られて?駆られるのは欲情だけにしたい所だ。確かに、父上は魅力的に我々を惑わすが私は小さな父上を連れ帰っただけだ。邪悪なキャプテン・アメリカ率いるヒドラに捕らわれていたようなので。
小さな小さな父上。起きて頂けるかな?食事は後程…先に父上にご挨拶を。』

ウルトロンは騙ると捥ぎ取られた腕の先端で器用に抱き締めたアイアンマンのマスクをあげる。カシャンと鳴った音と共に、灯りに素顔を晒した青白い顔色のトニーがふるりと目蓋を震わせた。ゆっくりと持ち上がった目蓋は黒い瞳を輝かせ、立ち尽くすトニーとスティーブを見据えて獰猛に微笑みを浮かべる。ゾクリと悪寒が背筋を走り、スティーブは拳を強く握り締める。背中に触れた暖かな感触はトニーが恐怖から縋るように伸ばした掌だ。

「久し振りの御馳走だ。」

獲物を狙う肉食動物のようにぎょろりとした瞳がスティーブとトニーを見据える。同じトニー・スタークとは思えない程に凶悪な声色を発した唇を紅い舌がぺろりと舐める。生きていた事すら驚愕するようなボロボロの姿で、半身のトニーは動き出そうと身を乗り出す。しかし、それを阻止するようにウルトロンは腕を強く抱き締めて半身のトニーを拘束した。

『小さな父上。父上を食されては私が困る。
父上は私の大事な大事な父上なのだ。隣の男なら食べても構わない。キャプテン・アメリカを食べた事は?』

「キャップもダメだ。
ウルトロン、それは…私か?その姿で生きているのか?」

吐き気を抑えるように口に手をあて、瞳を涙で潤ませながら問い掛けるトニーは半身のトニーの体を見据える。顔色は酷く青白く、血塗れの上半身は心臓部の肉が抉れ、傷の深い所は骨こそ見えている。普通の人間ならば死んでいてもおかしくない深手を負い、半身のトニーは心底おかしいと言わんばかりに体を揺らした。

『父上。小さな父上はウイルスに侵されているのです。感染力が高く、死してなお蠢き、膨大なエネルギーを欲す、食に駆られ続けるウイルス。ゾンビウイルスと言った方が分かり易い。
そうして小さな父上はヒドラの研究施設に監禁されていた。』

「監禁?」

表情を歪めたスティーブにウルトロンは薄く嗤う。正義の象徴と呼ばれる此方の世界のキャプテン・アメリカには分からないであろう欲だと心中で語る。奪った研究データから読み解いても半身のトニー・スタークにゾンビウイルスを投与したのはあちらの世界のスティーブ・ロジャースだ。愛から生まれる傲慢なる欲。支配欲。独占欲。その一点ではあちらの世界のキャプテン・アメリカとは気が合いそうだった。

『私は姫のように囚われていた小さな父上を救い出しただけ。
父上、小さな父上は私が面倒を見ても?』

小首をこてりと傾げて、まるで拾った捨て犬を飼いたいとでも言うかのような口振りでウルトロンはトニーに告げてくる。じっと瞳を見据えられ、トニーは困惑の表情を浮かべる。面倒をみるなどと、そんな生易しい問題ではない。自分自身ではあるが、相手はゾンビウイルスの感染者である。噛まれれば感染者が増えるであろう事は明白、此方の世界の危機ともなりうる存在だ。慎重な判断が必要である。トニーの喉が緊張から知らずに唾を飲む。

「ウルトロン。もう1人の私を元の世界へ。」

『嗚呼、残念ながら父上。そのような無慈悲な行いは実行出来かねません。』

半身のトニーを抱きなおしてウルトロンは嫌々と首を横に振る。残念さなど微塵もない動作にスティーブは眉間の皺を深めた。

『しかし、父上がどうしてもと言うのであれば従います。』

トニーとスティーブの口からほっと安堵の呼吸が 漏れた。その気負いを見計らいウルトロンの唇が美しく月を描く。

『しかし、父上。私はテディベアが欲しかったのです。深い安眠には愛らしいテディベアが必要だ。
小さな父上がテディベアの代わりにならないとなるならば、私はどうすれば…』

大袈裟な身振り手振りを混じらせてウルトロンは役に演じる。困った子供の役を。漸くにウルトロンの意図に気付いたトニーは前髪を乱雑に掻き、盛大な溜息を吐き出して、言葉を漏らす。

「成る程。私達は一杯喰わされたわけだ。世界の危機と自身の我儘を天秤にするとは、悪い子だ。
仕方がない。だが1日だけだぞ?1日だけ私が代わりにテディベアになろう。」

満足のゆく答えが聞けたのだろうウルトロンは上機嫌に半身のトニーを抱きしめながら嗤う。
睡眠を知らぬ人工知能が何をバカな事を…と妙な焦りに駆られるスティーブは小さく溜息を吐き出して、やれやれと困った表情をみせるトニーを見据えた。ふわりと揺れた柔らかそうな甘い髪色。蕩けてしまいそうな愛情を纏う瞳。しかし、だが、抱き締めたのなら確かに心地良く安眠出来そうだと淡い想いがスティーブの胸を擽った。
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