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零の音

瀬対ユウキによる【グローランサー シリーズ】中心非公式ファンblogです。

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AVENGERS小説【砂漠の薔薇】

AVENGERS小説【砂漠の薔薇】

バナトニで腐向け。
“目覚めるたびに君が傍に居る”物語。
仲良し科学組好きとしては、仲良しから始まらない物語は書いていて辛い。


『追記を読む(↓)』からどうぞ。



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ざらざらざらざらと砂の流れる音が聞こえる。殴りつけるように吹く砂嵐は僅かな岩間にも風を縫い破り、砂を叩きつける。纏ったボロボロの黒い布はかろうじて僕の呼吸を護ってくれていた。自然の猛威のなかで。小さな動物となって蹲る。恐怖心はない。死にかけたならば、きっとまた怪物が現れるだろう。砂に覆われるだけのこの場所ならば何も被害はない。怪物が現れる。ただそれだけだ。視界を閉じて、蹲る体をさらに小さく丸めた。ざらざらざらざらと耳障りな音に抱かれて、疲労が溜まった僕は意識を手放した。やっと眠れる…。


ぱさり。ぱさり。
僕の頭に触れる手は乱暴で、けれど優しい手つきをしている。ボロボロの布切れの上から、僕の頭に乗った砂を払っているのだろう。余計なお世話が君は好きだ。心中で毒付いて僕は溜息を吐き出した。

「やあ、おはよう。ブルース・バナー博士。」

黒い布切れを纏い全身砂まみれの君が僕に微笑む。毎回続くモーニングコール。目を覚ます度に、君は僕の傍に来てはニコニコと嬉しそうに嗤うのだ。何処へ行っても。自分は優れた人間だと証明したいのかい?君は御自慢のスーツでいつも僕の傍に現れる。何度も。何度も。その執着に鬱陶しさが溢れてくる。放っておいてくれ。僕は君に会いたくないと言うのに。傲慢な君は何処までも身勝手だ。
立ち上がり、全身に積もった砂を手で払う。ぱさりぱさりと舞い落ちる砂は朝陽に照らされて何処か滑稽だ。巨大な砂時計の中と同じ。滑り落ちる場所は2箇所だけ。

「全身砂まみれだな。髪も髭もだ。服の中にも砂が入ってきてる。肌についた砂が気持ち悪い。はやくシャワーを浴びたい。なあ、ブルース。君もそう思うだろう?」

だから一緒にスタークタワーへ帰らないか?と君は暗に語り掛けてくる。其処は僕の帰る場所ではないと言うのに。荷物袋の中から水袋を取り出して口に含む。蒸し暑さと不快感から喉が渇く。ゴクリ、ゴクリと喉を鳴らせば、君は小さく喉を鳴らした。君も喉が渇いているのだろう?だったら、はやくスタークタワーに帰った方がいい。其処で御自慢の人工知能に護られながら何不自由なく暮らすんだ。水袋の蓋を閉じて荷物袋に投げ込んだ。君は小さく眉間に皺を寄せたが、何も愚痴らない。君に水を渡すつもりはない。暗に示して、僕は荷物袋から取り出した小さな干し肉を囓り出す。少しの空腹を満たして、荷物袋を肩に担いだ。砂嵐から身を護る為に体に巻いていた布切れを、今度は直射日光を防ぐ為に頭に巻く。君は何も告げずに僕をただ見据えて見送るのだろう。もう日常と化した“いつも”みたいに。

「いい加減に気付いたらどうだ?」

予想外に背後から掛けられた君の声は酷く掠れて苦しそうだった。

「何に気付くと?
こんな生きる事さえ苛酷な場所にいる不毛さに?無慈悲な神の運命に?
嗚呼、君の執着心の高さと傲慢さにはもう気付いたよ。
あと何回 僕の死にそうな顔を見れば君は気が済むのかな?それとも、そんなにハルクに会いたいのかい?」

「ハルクならいつも会っている。」

「嗚呼。やっぱりそっちが君の本命?残念だけど、君がどんなに彼を好きでも。例え…いや、それはないだろう。何にしても。僕がこの体の持ち主だ。主導権を譲り渡す気はないし、僕は君を必要とはしていない。さっさと何処かへ行ってくれないか⁉︎出来得るなら僕の目の届かない場所へ。」

僕の言葉に小さく眉間に皺を寄せ、君は瞳を滲ませて俯いた。傷付いただろうか?いいや。そんな筈はない。裸足のままで砂に立ち尽くす君は、まるで枯れゆく薔薇のように無惨たらしい。
頭に纏った白い布切れを深く被り直して僕は砂漠を歩き出す。その場から逃げ出すように進めた歩は、ずしゃりずしゃりと鈍い音を鳴らし。足を絡め取る砂はひ弱な僕の体力を奪ってゆく。じわりと全身に滲む汗が気持ち悪い。喉はカラカラに渇いて、息をするたびに気管を傷ませる。肌を焼き切るような直射日光に意識を奪われそうになりながら、埋れる足を無理矢理に前へ前へと進める。呼吸がしづらい。視界がボヤける。頭が鈍く痛む。脱水症状かもしれない。水を…飲まなければ。肩に担いだ荷物袋を下ろそうとして僕は漸くに来た道を振り返った。
一面 砂と岩に包まれた世界。その視界の端に映る小さな黒い塊が砂嵐に巻き込まれて揺れている。はっと呼吸を飲み込んだ。どくりどくりと心拍数が上がるのに其処から目が離せない。あれはトニー・スタークではない。彼は御自慢のスーツでもう帰った筈だ。視界を外せ。走り去れ。確かめるな!心中で警鐘が鳴り響くのに、無意識に目を細めて黒い塊が彼なのかどうかを確認しようとする。やめろ!叫べない声が内から溢れる寸前、砂嵐に巻き込まれて揺れていた黒い塊がふらりと地面へと倒れ、吹き荒ぶ砂嵐と同化してゆく。砂に飲み込まれてしまう。

「ーーーッ!」

弾けた声と同時に僕は荷物を放り出して駆け出した。足を取られて砂山から転がり落ちて、それでも手足で砂を掻き立ち上がりながら無我夢中で走る。視界はずっと動かないまま。離したら見失ってしまう。じわりと滲む視界が熱い。胸の奥も。喉の奥も。口の中に入り込む砂を奥歯で噛み潰して、僕は君の名前を呼んだ。

「ーーーッ!」



煩い咆哮で意識を取り戻す。
嗚呼、此処は何処だ?踏み締めた地面は硬く、バキリと何かが壊れる音がする。砂ではない。アスファルトだ。そうだと認識すれば次第にクリアになる意識。視界が開ける。
満月の夜。深夜の闇の中でも明るい高層ビルの群の中を猛スピードで僕は走っている。見慣れた風景に心がキリキリと痛む。もう少し走れば。あの交差点の角を曲がれば。輝くAのマーク。此処はニューヨーク。あれは彼が居るスタークタワーだ。やめろ!叫ぶ声とは裏腹に僕は走り続けた。目的地は其処なのだろう。高くそびえ建つ機械王の城。そのプライベートルームに視線を上げて僕は笑った。たった一つの開かれた窓に向かって飛び上がる。高く。高く。掴んだ天井がミシリッと悲鳴のような音をあげた。ゆっくりと目的の窓から踏み込めば、綺麗に飾られた室内で君はグラスにワインを注ぎながら微笑みを浮かべる。

「やあ。ハルク。また迎えに来たのか?」

悲痛な表情で微笑む君が僕をハルクと呼んで。嗚呼、そうなのだな。と納得する。僕はあんなに速く走れはしないし、視界もあれ程に高くはない。僕が渾身の力で飛び上がろうとも、スタークタワーのプライベートルームまで軽々と入れる筈がないのだ。ならばこれはハルクの記憶なのだろうか?それとも、願望か?

「随分と砂まみれだな。ほら、髪から砂が落ちている。シャワールームを使うか?君用に大きな浴槽だって用意してある。」

愉快そうに微笑む君はグラスに唇を寄せて透明な液体を飲み込もうとする。触れる唇。その手を掴んで、引き千切った純白のカーテンごと君の体を丸め抱き締めてハルクは窓から飛び出した。君を大事に抱えながらニューヨークの街中をハルクは走る。腕の中でもがく君は体に掛かる白い布切れを振り払い、濡れた髪を掻き上げた。

「カーテンが邪魔だ、ハルク。」

「必要になる。」

「必要?こんな布切れがか?まったく。今回は何処へ連れて行くつもりだ?」

悲しげに苦笑する君は風呂上がりだったのだろう薄着で裸足のままだ。艶やかな肌は赤みを帯びて僕の思考を狂わせる。待て。今回は?

「バナーは今度は何処にいるんだ?また密林地帯は困るな。ジャーヴィスと連絡が取れなくなる。排水路や路上ならまあまだマジだ。海は好きだ。波の音が聞こえるからな。なあ、ハルク。君は本当は何処で生きたい?バナーが望む場所は何処だ?」

問い掛けてくる君の眼差しは慈愛に溢れているが、ハルクは応えようとはしない。きっとハルクには分かりはしないだろう。僕が求める場所はただ1つだ。けれど、嗚呼。トニー、君が今話した場所は“君が僕を追い掛けて来た筈の場所”だろう?何故?

「またバナーに拒絶されるな。」

「本当の事を言えばいい。」

「君は生命の危機に陥るとハルクとなって私を迎えに来ると?私の言葉など信じないだろうな。私は、バナーに信頼されてはいない。」

ハルクの指を優しくするりと撫でた君はくつくつと微笑んで悲しげに瞼を閉じた。こんな傷付いた顔を僕は何度も見て来た。目覚めるたびに、優しい微笑みで僕の前に現れる君に、僕は何度も酷い言葉を投げつけ続けたのだから。優しい君は、傷付きながら。それでも、何度も何度もハルクに迎えられて拒絶せず僕の傍へと来てくれていたと言うのに。此れは記憶なのだろう。ハルクの記憶。これが真実だとするならば、嗚呼。僕はなんて愚かな事をしてきたのだろうか。視界が暗く染まってゆく。意識が途切れる。待ってくれ!手を伸ばそうとして、僕は息を飲み込み、手を握り締める。此れが正しいハルクの記憶ならば。次に僕が目覚めた時、君はきっと微笑んで僕の傍に居てくれる筈だ。謝ろう。君に。自分の本心すら見抜けない馬鹿な僕の傍に居続けてくれた優しい君に。



息苦しい。深く息を吸い込んで咳き込んだ。意識を取り戻した瞬間に両腕の中に抱く暖かな存在に安堵する。此処は何処かは分からないけれど、ハルクが現れて去ったのならきっと安全な場所なのだろう。口の中は砂だらけで苦い。砂塗れでまだ開けられない瞳に頼らず、僕の胸に身を任す君を手で掻き抱く。砂塗れの柔らかな髪。ざらりと纏わり付いた砂を払い首筋の肌に触れれば、じわりと伝わる熱に目を見開く。

「トニー…。」

砂を飲み込んだ声は酷く掠れて無様な響きになる。嗚呼。数刻前、背後から不意に掛けられた君の声も掠れていた。君もきっと砂を飲んだのだろう。名前を呼びかけて、君の頬を引き寄せる。砂塗れの頬を拭い、浅い呼吸を繰り返す君の渇いた唇を指でなぞる。瞼を閉じたままの君はぐったりとして僕の腕の中に抱き締められている。嗚呼。熱を放つように体温が高い。何の準備もなく、薄着のまま過酷な場所へ連れて来られたせいだろう。肩や腕の肌は紅く、下手をすれば焼け爛れてしまいそうになっている。トニーの体を冷やさなければ。熱傷に脱水症状もおこしている。出来得るなら治療の出来る場所へ。

「トニー…。」

名前を呼び掛けながらトニーの身体を抱きかかえようと脇に腕を回せば、バタバタとした騒音が耳に響く。白い扉の隙間から長いホースを掴んだ黒と銀に彩られたアームがガタガタと機体を揺らす。何処からかホースを引っ張って来ているのだろう。主人想いなダミーは美しい室内を水浸しにしながら、トニーの傍へと来て悲しげに音を鳴らす。彼も心配しているのだ。嗚呼。じわりと目頭が熱くなる。心配なんだ。僕も。彼を愛してしまったから。溢れそうな涙を堪えて、与えられたホースを掴み、抱きかかえたトニーの紅く熱くなった身体を冷やしてゆく。

『既に医療チームを呼んでおります。到着まで、トニー様の事を宜しくお願い致します。』

不意に天井から届いたジャーヴィスの声に僕は堪えきれなくなって涙を零した。情けなく嗚咽を零しながら、トニーの名前を呼び続けて必死に身体を冷やし続ける。次第に近寄って来たもう一つのホースは黒い機体のダミーとユーが協力して引っ張り、紅くなったトニーの裸足の足を冷やしてゆく。流れ続ける水は纏わり付いた砂をさらさらと流し、僕らの体に沁み渡ってゆく。此処は、スタークタワーだ。トニーにとって大事な場所。ハルクにとって。いいや、僕にとって。安全な場所。

「……ば…なぁ…」

ふるりと揺れた睫毛。朦朧としたトニーの瞳が僕を見据えて、掠れた唇がたどたどしく声を発する。嗚呼。砂時計の砂が行き着く先は。僕が望む場所は。たった1つだ。

「トニー…僕はずっと、君を求めていた。君が傍に居てくれる事を。望んで。どんなに離れても諦めきれない。君が必要だ。僕が生きたい場所も、死にたい場所も、君の傍だ。」

弱々しく。けれど、ふわりと暖かく微笑む君は砂漠の薔薇と同じだ。長い長い刻を掛けて。砂に塗れ、風に晒され、身を削り、僕の心を絡めとって綺麗に花開く。砂漠に咲いた薔薇。
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