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零の音

瀬対ユウキによる【グローランサー シリーズ】中心非公式ファンblogです。

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IRONMAN小説【誰が為に祈る】

IRONMAN小説【誰が為に祈る】

老執事人間Jと子トニー様。
なんとなしに書いたお話。せっかくなので載せてみる。
書きたくなったのは人間Jを映像として初めて見れたからかもしれない。
一応 腐向け扱い。


『追記を読む(↓)』からどうぞ。





-----------------ーー



重苦しい空気に満ちている。檸檬を沈めた紅茶を部屋に運んできたメイドはこの繊細な空気を感じ取り早々に引き上げている。賢明な判断だと言えるだろう。この部屋の主はご機嫌斜めで、柔らかな指に似合わない工具を握り締めてがしがしと揺らしている。

「父は僕が邪魔なんだ。思い通りにならない機械と同じ。」

ぽつりとトニー様が呟いた。

「嗚呼…トニー様。そんな事はありません。ハワード様はトニー様を心より愛しておられます。」

トニー様がハワード様を“父”と呼ぶようになって数ヶ月。日々変化する呼び名に心が痛む。「パパ」と呼んだトニー様をハワード様は無視なされてしまった。大事な商談の最中だったのだ。「父さん」と呼んだトニー様を置いてハワード様は出掛けられてしまった。愛する家族を巻き込めない大事な仕事があったのだ。ハワード様を「父」と呼ぶトニー様は賢いが、真実を知るにはまだまだ幼過ぎる。幼い子供には不釣合いな苦笑が浮かぶ。

「信じておられませんね?」

尋ねればトニー様は機械弄りの手を止めて私を見た。

「ジャーヴィスの言葉は信じたい。
けど、現実はこれだ。父は僕の誕生日を忘れてる。だが、悲観する必要はないな。大勢の綺麗な女性から御祝いの言葉とキスを。誕生日プレゼントも沢山貰ったし、ケーキも特注品で豪華。僕の大好きな甘いお菓子もたくさん。僕は幸せだ。」

「幸せそうな笑顔だけ御上手になられましたね。」

トニー様はむすりと顔を顰め面にさせて私から視線を逸らした。再び工具を揺らす手は荒っぽい。

「僕は天才で金持ちだからな!みんなに祝福される!幸せなんだ!」

やれやれと溜息を吐く。素直ではない幼い主人。数時間前、賑やかなパーティー会場で「このケーキは僕のだから食べちゃダメだぞ!僕が部屋で独り占めするんだ!」と傲慢とも言える態度で宣言したトニー様の笑顔はもう此処にはない。テーブルに並ぶいくつかの甘いケーキの中に、ハワード様好みの品を見付けたトニー様は私にそれを室内に運ばせた。ハワード様の為のケーキを家族一緒に映った写真の前にそっと置いたトニー様は其処で小さく息を吐いて肩を落とした。あたたかな家族愛を諦めてしまっている。私だけがこの寂しさで泣き出してしまいそうな背中を知っている。小さな手に握られ、がしがしと揺れる工具は荒っぽい音を立てて、まるで悲鳴のようだった。トニー様はきっと日付が変わるまで機械を弄り続けるのでしょう。

「…ジャーヴィス。」

「はい。トニー様。」

「考えたのだが、流石にあのケーキは私1人では大き過ぎる。ホール1つを丸ごと食べてしまっては私のキュートなボディが台なしだ。世界の美女達が泣いてしまう。男としてそれは阻止しなければならない。…そうだろう?だから、日付が変わったら、一緒に、食べてくれ。」

「かしこまりました。トニー様。」

幼い主人に頭を下げて、私はポケットから懐中時計を取り出した。忙しなく動く短針と長針が残酷に上がってゆく。いっそ時計など止まってしまえばいい。真上に上りゆく針を見据え、どうか重ならないで欲しい、と、そう祈りながら私は小さく溜息を吐き出し肩を落とした。
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