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零の音

瀬対ユウキによる【グローランサー シリーズ】中心非公式ファンblogです。

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AVENGERS小説【双眸の先に。】

AVENGERS小説【双眸の先に。】

社長が片目義眼の双眸シリーズ。無自覚愛され社長と壊れてゆく人々。ジャトニです。

『追記を読む(↓)』からどうぞ。





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視界が狭まる。J.A.R.V.I.Sは実感していた。
リビングルームで、透明な硝子テーブルの上に、真紅の薔薇の花束とともにお気に入りのドーナツ店の箱を見付けた時。
賑やかでありながら退屈なパーティーで、飲み過ぎな酒を止めに来たスティーブ・ロジャースが、手にしていたワイングラスを些か強引に奪い、グラスに残ったワインを飲み干した直後に。
静かな研究室で、モニターに指を滑らせながら穏やかに掛けられたブルース・バナーの声に。

主であるトニー・スタークの視界が狭まるとJ.A.R.V.I.Sは実感していた。



見据えれば溶け込みそうな程に強さと甘さを纏うトニーの左眼はいまは義眼だ。アイアンマンとして、アーマーを生身に纏い戦い続けた結果として左眼は治らぬ深傷を負い、トニーは自らが造り上げた最新鋭の義眼を眼孔に埋め込んだ。義眼は耳に掛けた機械からトニーの脳波と繋がり、今までと変わらない視界をトニーに見せ続けている。
否。と彼らは言うだろう。
義眼はトニーの脳波とだけでなく、電子の世界に存在するJ.A.R.V.I.Sとも繋がっている。トニーの義眼は、失明したトニーの“視覚”で在りながら、J.A.R.V.I.Sの“カメラ”だった。


とろりと眼差しが溶けたトニーは濡れた髪を撫で上げながらリビングルームの白いソファーに座る。見据えているのは紅いワイングラス。室内のカメラから捉えた映像と眼孔内からの映像を見比べ、酔っている主の視界はこうも現実と差があるのかとJ.A.R.V.I.Sは判別する。瞬きの回数が多い。節酒量も多かった故に体の限界が近いのだろう。うとうとと、ソファーに身を沈め舟を漕ぎ始めるトニーにJ.A.R.V.I.Sは不快にならない音量で優しく囁く。

『トニー様。其処で眠られては風邪をひきます。』

J.A.R.V.I.Sの声に弾かれるようにして顔を上げたトニーはへにゃりとまるで花が綻ぶように愛らしく微笑む。視覚が狭まるのだとJ.A.R.V.I.Sは実感する。

「大丈夫だ。タワーの室内温度は、J.A.R.V.I.S、お前が常に最適に保ってくれているだろう?私はお前を信愛している。だから私が風邪をひくことは…」

『“此処”なのですね?』

「ない」と告げようとした言葉を突然に遮られ、首を傾げたトニーにJ.A.R.V.I.Sは続ける。

『トニー様の認識する“私”は、いま現在、“此処”に居るのですね?』

義眼である左眼の視界に突如として現れた蒼いホログラム。右眼には映ってはいない存在。それにはっと息を飲んだトニーは指に絡ませていたタオルをぱさりと床に落とした。キュルキュルと音をたて、僕がタオルを拾うんだとばかりに嬉しそうに近寄ってくるDUM-Eが小さくテーブルにぶつかる音が響く。
機体の存在するDUM-EやUと違い、機体のないJ.A.R.V.I.Sには明確な位置などない。だからこそ、トニーが「J.A.R.V.I.S」と名を呼び、向けた視線の先がJ.A.R.V.I.Sの居場所なのだとJ.A.R.V.I.Sは結論付けた。右の視界には映らない蒼いホログラムがトニーの傍に跪き、0と1で構築された手を伸ばす。触れられた感触はない。しかし、トニーの頬を愛おしむように撫でた蒼いホログラムはそれで満足したとでも言うように視界から雲散してゆく。どくりどくりと妙に脈打つ心臓を落ち着かせるように、胸元を掴んだトニーは小さく息を吐き出す。

「驚かせるな、J.A.R.V.I.S。左右で違う光景を見るのは心臓に悪い。まるで幽霊でも見てしまったかのような気分だ。外では、絶対にやるな。」

『Yes,Sir。しかし、トニー様。私はやっと私を認識出来ました。そして安堵も。貴方が見据える私は視界が狭まる。』

「何の事だ?」と眉間に皺を刻むトニーにJ.A.R.V.I.Sは内密に微笑む。愛情を抱いている存在に接した時、トニーの視界は狭まるとJ.A.R.V.I.Sは実感していた。無意識に狭まる視界。これを注意すればいい。J.A.R.V.I.Sはトニーを深く愛している。トニーを独占したいと、トニーから愛情を与えられる存在は私だけでいいとすら、J.A.R.V.I.Sは望んでいる。今までは手段がなかっただけ。だが、今なら手段がある。邪魔者は主の愛情が深くなる前に遠ざければいい。主と視界を共有する今なら出来る。

『眼は覚められましたか?さあ、再び眠くなる前にベッドへ向かってください。大切な貴方が風邪をひかれては困ります。』

真意をはぐらかすように優しく囁いたJ.A.R.V.I.S。トニーはふらりと立ち上がると眠気を払うような仕種で左の瞼を撫でた。異質な世界。存在を認識したのはトニーも同じだった。いつも以上にJ.A.R.V.I.Sが傍に居るような気がしたトニーは、そっと右眼にだけ手を触れ視界を閉じてみた。失明する筈だったそこは未だに黒色の世界を纏っているようで、臆病な子猫のようにトニーはふるりと首を振るった。
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