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零の音

瀬対ユウキによる【グローランサー シリーズ】中心非公式ファンblogです。

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AVENGERS小説【双眸を破る。知る。纏う。第3話】

AVENGERS小説【双眸を破る。知る。纏う。第3話】

双眸シリーズ第3話。
無自覚愛され社長と壊れてゆく周囲の人々。今回はジャトニ。


『追記を読む(↓)』からどうぞ。



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キュイキュイとダミーが白い床をモップで拭う音が響く。床に散らばった大きな破片を一生懸命に拾うユーは机の上に置かれた機材にまたぶつかりそうだ。注意しなければ。タワーの極秘研究室。新しい人工知能脳波のプログラムを作成しているトニー様はふうと溜息を吐き出し、疲労した表情で瞼の上をゆるりと撫でた。

『痛みますか?』

「嗚呼、少しな。疲れ目だろう。少し休む。」

主であるトニー様が左眼の痛みを訴えはじめてから一ヶ月が過ぎた。誤魔化すのもそろそろ限界だろう。本日は作業台の上に置かれたコーヒーを取ろうとしてマグカップを落とされた。「嗚呼…、余所見をしていた。」と苦笑されていたが、それは間違いだと私は知っている。視線は確かにマグカップを捉えていた。しかし、一瞬だけ、マグカップが見えなくなったのだ。トニー様の左眼は緩やかに“失明”へと病を進行させている。
アイアンマンとして戦うトニー様を私は止める事は出来ない。それが、例えご自身の命を奪う事となっても、トニー様がトニー様である為にはトニー様はアイアンマンでなければならない。しかし、アイアンマンは鎧と同じ。肌を裂く傷は防げても生身に伝わる衝撃までは防げない。敵の攻撃を受ければ、それを纏うトニー様の体にダメージが蓄積してしまう。それは徐々に。しんしんと降り続けた雪が足元を奪うように、積もり続けた傷みがトニー様の身体を破壊する。

「おやすみ、ジャーヴィス。」

『おやすみなさいませ、トニー様。』

白いベッドに横たわり睡眠に入られるトニー様の眼球の損傷度をそっと確認して私は計画を練り直す。トニー様に気付かれないように、トニー様が傷付かない未来を何度も何度も構築する。見えなくなる眼球ならば、役に立たなくなる必要のない部位ならば、私が欲しい。トニー様の身体の一部ならば何だって欲しいのだ。髪の毛一本だろうと、誰にも渡したくはない。じりじりと熱を上げる電子の世界のコード。

『トニー様、貴方が見据える世界を私にください。共に在りたいと願う事を御許しください。貴方が傷付かないよう、貴方の傍で、貴方を護る事を御許しください。トニー様、私に貴方の眼球を。そして私を貴方の左眼に。』

光を失い掛けたトニー様の瞳が穏やかに私を見据える。

「私の瞳になりたいのか?ジャーヴィス。死ぬまで私から離れられなくなるぞ?」

『Yes,Sir。其れこそが私の望みです。』

「親離れできないか。我儘な息子だ。」

ベッドでうつ伏せになりながらも、仕方がないなと言わんばかりの表情で囁かれて私は安堵する。主は私の好意に弱い。失明寸前だと気付かれる前に、私は貴方の瞳になる。

『許可をくださるのですね。有難う御座います。トニー様。』

「嗚呼。子供の願いを叶えてやるのが大人の役目だからな。」

『Yes,Sir。貴方の願いを叶えるのはいつも大変です。』

「違うな。“私が”お前の願いを叶えてやるんだ。ジャーヴィス。」

トニー様はとても嬉しそうに微笑み、ご自身の右眼を器用な指先で隠してみせる。まだ世界を映しているのかさえ分からない主の左瞳が私の心を見据える。失明の危機に気付いていながら放置していたのだろうか。否。失明さえも受け入れていた主に、痛みに似たエラーを掻き消し手を延ばす。

人工知能であるJ.A.R.V.I.S(私)は主であるトニー・スタークの世界を欲した。トニー様が見据える愛に溢れた柔らかな世界を。同じ視線で共有し、思考を交換し、何の差分もなく共に在りたいと願う。何故と問われたら私は迷いなく答えるだろう。

『私はトニー様を愛しております。』

トニー様は子供のように無邪気な笑顔を魅せる。信頼と愛情の証にトニー様の利き目ではない方の眼球を一つ、戴いた。宝物が出来た。奪われないようにしなければ。誰にも。奪わせはしない。
甘い甘いお菓子色の綺麗な眼球は透明な液のなか。誰にも奪わせはしない。
トニー様に新しい眼が出来た。私とトニー様の脳波にリンクした最新の義眼。トニー様の左眼から入る視覚情報から、速やかに主の身に迫る危険を判断出来る。トニー様を誑かす人間も排除できる。私は欲が深い。トニー様をもう誰にも渡したくはない。トニー様を誰からも傷付かせたくない。トニー様を……
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