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零の音

瀬対ユウキによる【グローランサー シリーズ】中心非公式ファンblogです。

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AVENGERS小説【双眸を破る。知る。纏う。

AVENGERS小説【双眸を破る。知る。纏う。】

無自覚な愛され社長と病んでゆく人々。
まだ博士→社長のみ。


『追記を読む(↓)』からどうぞ。





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踏み進んだ足元からカサカサと枯れ葉の音が響く。ニューヨークの街中はすっかり秋の気配に包まれていた。嗚呼、もうすぐハロウィンなのだな、と知れず溜息がでる。道沿いに建ち並ぶショップはハロウィン独特の色合いに染まり、楽し気に鮮やかな色彩をみせている。ふと目に入った雑貨屋の店頭に飾られていた陶器が僕の胸を淡く焦がし、僕は陶器からさりげなく視線を逸らした。ハロウィン用の飾りだろう寄り添いあう2匹の黒猫。碧色と茶色の双眸をした2体の姿に僕は息を吐き出し、荒くズボンのポケットに手を突っ込んだ。


「危険はない、博士。」

秋の風が吹く公園。彼とベンチに座っていた。フード付きパーカーを羽織ったトニー・スタークはにこりと愛嬌のある微笑みを浮かべて、黒いサングラスを元の位置に押し上げた。僕が買って来たマロン風味のマカロンを手に取りぱくりと頬張って、トニーは上機嫌で鼻歌を歌う。綺麗な歌声が僕の耳を掠めてゆく。横目にトニーの顔を見れば、サングラスの隙間から覗く茶色の甘い瞳が僕を捉えて和らいだ。

「君に危険がないなら良いんだ。」

「博士は心配性だな。」

疑う事など知らないように自信満々に笑うトニー。僕は「そうだね。僕は気が短いから、心配なんだ。」と吐き出すように呟いた。君が、とはもう言えない。止めるには遅すぎた。それでも、隠れた陽射しに寒そうに手を震わせるトニーの手を暖めてあげたいと願い、指をそっと動かした。ピリリと携帯電話の着信音が鳴り響く。その音にトニーの手に触れる寸前だった指を止め、握り締めて、僕はベンチから立ち上がる。

「用事があるんだ。僕はもう帰るよ。近い内にまた会おう、トニー。」

こくんと頷き、柔らかな微笑みを浮かべて携帯電話の通話ボタンに触れたトニー。携帯電話から漏れる声を聞きたくなくて、其処から逃げるように僕は足速に立ち去った。きっと未来が見えていないのだろうトニーと、未来が見えている僕。どちらが、幸せなのだろうか?


パキンと硝子の割れるような音が響く。ふと気付けば、意図せず、恐らくは無意識にだろう、購入していた寄り添う2匹の黒猫の陶器が地面に叩きつけられ、引き裂かれるように2つに割れていた。茶色の瞳をした黒猫の陶器がトニーと重なり合う。僕は手を伸ばして彼を優しく抱き上げ、ひび割れ土汚れした体を裾で丁寧に拭い、茶色の瞳に頬を寄せた。

「君だけしかいらない。」

地面に転がった蒼い瞳の陶器を踏み潰せば、それは簡単に粉々に砕け散る。茶色の瞳を纏う黒猫の陶器を大切に抱き締めながら、僕は木の葉の舞う街路を歩き出した。帰宅したらゆっくりと直そう。彼のひび割れた体を。
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