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零の音

瀬対ユウキによる【グローランサー シリーズ】中心非公式ファンblogです。

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IRONMAN小説【世界】

IRONMAN小説【世界】

ティベリウス×社長、ジャーヴィス×トニー。
女装ネタあります。お気を付けくださいませ。
原書を知らぬまま一部情報のみで書いたのでティさんの性格等に違いがあっても許して下さる心優しい方向けです。

『追記を読む(↓)』からどうぞ。





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正直に話そう。僕は“不思議の国のアリス症候群”を患っている。君は不思議の国のアリス症候群を知っているかな?知らなければ調べてみるといい。其処は知識も機会も充実した世界だ。電子の機能を使えばすぐに分かるよ。さて、そこで僕の不思議の国のアリス症候群の症状だけれど、僕はある人物に対してだけ症状を発症している。“彼”を視界に入れた途端、僕の脳は誤作動を起こすんだ。マシュマロのようにふわふわとして甘く、潮騒のように爽やかに、全身が世界に溶け込むような高揚感。現実から現実感が薄れ、其処が僕だけの夢世界になる。たった1人の存在が僕を素晴らしい夢へと連れて行ってくれる。
不思議の国のアリスが食べて体を大きく、また、小さくさせたのはキノコだが、僕は彼を視界に入れて夢の世界の住人になる。同じ体験を彼にも味わって欲しい。苦痛も喪失も残虐性もない素晴らしい夢世界に僕と彼の2人。僕は芋虫で、彼は碧いワンピースを着た可愛らしいアリス。僕は不思議なキノコを彼に勧めるんだ。さあ、食べてごらん。ワンダーランドへようこそ。


「また最後で君に追い抜かれてしまったね。」

満足感から唇に笑みが浮かぶ。額に浮かぶ汗をタオルで拭いながら告げれば、彼はスポーツドリンクを飲みながら僕へと視線を向けた。柔らかく動いた唇が勝ち誇った笑みを浮かべ、器用な指先がスポーツ着の胸元を掴みぱたぱたと仰がせた。灼けた運動場のアスファルト、風に揺れた木々。じわじわと夏の暑さを放つ僕の青春時代。

「次は負けないよ。」
「次も勝たせてもらう。」

同時に動いた唇が似たニュアンスで僕達の意思を繋ぎとめた。君の眼差しが僕を見据えて細まる。ぐにゃりと揺れた世界が丸く僕等を囲み、遠くから響く雑音が消えた。でも君は雑音に気を取られ、僕から視界を外してしまう。遠い遠い狭間から微かに聞こえてきた声。

『…ト…ニー…』

「誰かが呼んでいる。行かないと。」

汗に濡れた髪を風に揺らし、駆け出そうとする君の手首を掴む。驚いた君の眼差しが僕へと向いて僕の世界は再び幸福な夢に満ちた。引き寄せて、長年抑えていた衝動のままに君の躯を背後から抱き締める。幸福だ。運動により少し高くなった君の体温がじんわりと僕の躯に染み渡ってゆく。

「これは幸せな夢だ。僕以外の誰とも戦わなくていい。争わなくていい。傷付く必要も、責任を負う必要もない。何もかも忘れていい。
僕だけを、見て、触れて、感じて欲しい。アンソニー・エドワード・スターク…トニー。嗚呼、トニー。僕の名前は?」

僕の腕の中でトニーがもそりと動いた。躯と躯を正面に向き合わせ、トニーの美しい瞳が僕だけを見据える。淡い色の唇から震えるような吐息が洩れて、こつんとぶつかった額同士に鼻先が掠める。

「ティベリウス・ストーン…ティ。」

そう。僕はティベリウス・ストーン。君の大切な存在。

ぐらりと揺れた世界。トニーの躯を押し倒せば柔らかなベッドが僕等の躯を受け止めた。真っ白なシーツにさらりと広がるトニーの髪は繊細で艶がある。驚きに眼を見開いたトニーはもそもそと顔を動かし視界を周囲に彷徨わせた。薄暗い寝室。今でも細部まで憶えている寄宿舎のトニーの部屋。生活感よりも研究室を彷彿とさせる夢の部屋。ベッドに落ちたドライバーは君が僕からの手渡しを拒否した証。トニーの頸筋に唇を寄せる。優しくキスをして、白い肌を唇で柔らかく喰む。

「なにが起こって…?」

「今度は受け取って。」

状況が理解出来ず混乱するトニーの手に僕は転がっていたドライバーを掴み、そっとトニーの指に握らせた。手渡しだ。トニーは眉を顰めて指を離そうとするから、僕は困ったように微笑みながらトニーの指ごとドライバーを握り締めた。トニーの眉間の皺が深くなる。

「大丈夫だよ、トニー。僕は君に爆弾を手渡したりなんかしない。此処では誰も君を殺そうとしたりなんかしないんだ。此処には君と僕しかいない。大丈夫。大丈夫だよ、トニー。」

トニーの指に僕の指を絡ませて熱をうつしてゆく。しだいに不安定に揺れはじめるトニーの瞳を見つめて、僕は安堵させるように何度も「大丈夫だよ。」と囁き優しく微笑んだ。次第に弛緩してゆく躯。落ち着きを取り戻したトニーの呼吸が接触したままの躯に伝わってくる。

『…ト…ニー……』

「誰かが呼んでいる。」

柔らかな髪を撫で、キスをしそうな程に触れ合う寸前だったトニーの唇が小さく動いた。僕はトニーの腰に腕を回して横たわる躯を引き寄せる。


ぐらりと揺れた世界。賑やかなプロムの会場。浴びせるように降り注ぎ、輝くスポットライト。祝いの料理に華を添えるシャンパン。色彩鮮やかに視界を楽しませる賑やかなる人々の歓声。新調したタキシードを着込み、頭には冠をのせた僕はトニーの腰に手を添えてダンスホールの音楽にのる。瞳を見開いたトニーは碧いエプロンドレスに身を包み、頭上には僕とお揃いの金冠を。プロムのキングは僕。クイーンは君。

「…違う。キングは…」

「間違いじゃないよ。これが正しい世界なんだ。」

絡ませた指を強く握り合う。トニーが動くたび、ひらりひらりと舞い踊る碧いドレススカートは優雅で気品に溢れて美しい。アリスの衣装は君によく似合う。ダンスホールの人々が次第に僕らを見据えて僕らだけのステージをつくる。僕のリードに合わせて愛らしいアリスが舞う。僕とトニーだけがこのパーティーの主役。

「まあ!綺麗ね!」「見て!なんて素敵なの!」「本当!素敵だわ!」「お似合いの2人だ!」「まさにキングとクイーンに相応しいよ!」「可愛らしいわ!」「もっと踊って!」「ティベリウスと一緒に!」「ずっと!」「見ていたいわ!」「もっと!」「永遠に!」「もっと素晴らしいダンスを!」

チェシャ猫。仔豚。時計ウサギ。マッドハッター。ヤマネ。トランプの兵士。ハンプティ・ダンプティ。歓声をあげるクラスメイト達が不思議の国の住人達になる。僕とトニーを囲む不思議の国。ふわりと舞った碧と白のドレス。トニーの躯を強く抱き寄せ、頬から唇を優しく撫ぜた。

「トニー、僕だけのアリス。」

永遠を誓う祝福のキスを…。



『トニー様…』

突然響いた雑音に腕の中のトニーがはっと息を呑み顔を上げる。重なる寸前で逸れた唇、憤りと切なさが満ちる。トニーの眼差しが揺れ動き、触れた温かな躯が僕から離れてゆく。寂しいな。不思議の国を焼き尽くすように、眩しい程に輝きだした世界。開かれた扉。逆光で見えない其処に誰かがいた。黒いシルエットの男。執事のように真っ直ぐの姿勢で、トニーに手を差し伸べる誰か。顔が…よく、見えない。

『御迎えにあがりました、トニー様。』

忌々しい声に導かれて。嗚呼、僕のアリスが行ってしまう。差し伸べられた手に重なるトニーの指。その光の先は、残酷で、悲しくて、辛くて、君に優しくない世界だというのに…それを知りながらも君は行ってしまう。執事の手に導かれるまま歩むトニーの綺麗な眼差しが僕を振り返った。手を差し伸べようとするトニーに僕は微笑み、首を横に振って拒絶する。

「僕は此処で待つよ。きっと君は戻って来るだろうから。堪えられなくなったら、いつでも此処へ戻っておいで。僕だけのアリス。僕の愛しいトニー。」

世界も、躯も、君に向けた微笑みすらも、すべて眩い光に呑み込まれた。






ゆっくりと瞳を開いて心地良い微睡から目が覚めた。電気信号が急速に脳を駆け巡り思考がクリアになってゆく。白いベットに投げ出した躯はラボから上がって来た時のまま。嗚呼、夢をみていた気がするな。時刻を確認しようと、もそりと動けば心地良い声が室内に響いた。

『おはようございます、トニー様。
現在の時刻は14時16分。ニューヨークの天候は晴れ。陽射しの強さを調節致しました。ご気分は如何ですか?』

「嗚呼、ジャーヴィス。悪くない。夢をみていた。どんな内容かは忘れてしまったが…」

右手を持ち上げ目前に翳す。睡眠により上がった体温のせいか、じわりと熱を持った手の感触が蘇る。誰かに手を握られていたような気がするのだ。だがしかし、嗚呼、誰かが分からない。

『トニー様。』

優しい呼び声に視線を手から離す。途端に微笑んだような吐息が室内に響いて、私は眉間に皺を寄せた。まるで人間のように、安堵するようでありながら誇ったようなジャーヴィスの吐息。気に喰わないぞと視線で睨み据えれば、ジャーヴィスは嬉しそうに囁くのだ。

『失礼。私が名を呼べば貴方は必ず振り向いてくださるので。』

何の事だと顔を顰めながらも私は白いタオルケットを横に避けてベットから起き上がる。だが、嗚呼、そうだな。昼寝の睡眠により固まった腕と躯の筋肉を伸ばし私はジャーヴィスに答えた。

「可愛い息子と美女が私を呼んでいるなら振り向かない訳にはいかないからな。
さあ、ジャーヴィス。ラボに戻って試作機の続きだ。お前の言う事を聞いて睡眠を取ったのだから、明日の夕方までは作業に集中するぞ!文句は聞かない。」

にっと微笑めばジャーヴィスは笑うのだ。キュルキュルと嬉しそうに音を鳴らし、工具を掴んでダミーとユーも傍に寄って来る。握り締めた手を夢の中でそっと引かれた気がしたのだ。心地良い私達の世界へ。

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