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零の音

瀬対ユウキによる【グローランサー シリーズ】中心非公式ファンblogです。

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AVENGERS小説【ヴィラン社長とその執事】

AVENGERS小説【ヴィラン社長とその執事】

ヴィラン社長とその執事。と、2人のヒーロー達。
ジャトニ…と見せかけて総愛され社長。
金髪の男性はティベリウスさんでもキリアンでも。

『追記を読む(↓)』からどうぞ。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


全面強化硝子で構築された閉鎖空間。其処が彼がいま居る場所。牢獄のような其処には何もない。椅子も。テーブルも。寝具も。何もかも。“彼”は天才。だからこそ其処にある物全てを“武器”に変えてしまう。狂った彼は大衆に向けた笑顔で告げる。「私は世界最恐の“ヴィラン”だ。」と。部屋の外には監視役の男達が常に数人。彼=トニー・スタークから一瞬たりとも目を離さぬように立っている。

『おはようございます。トニー様。』

「おはよう。私のジャーヴィス。」

両手脚、腰、肩、膝をベッドにベルトで拘束されたまま彼は自慢の執事に毎朝 挨拶をする。そのベッドも彼が起きれば室内から直ぐに撤去されるのだ。朝食は小さく一口サイズに切り揃えられたパン。ナイフもフォークもない。手錠を嵌め拘束されたまま食事をおこなう彼には一切れずつにしか食べれないよう配慮がしてある。

『トニー様。貴方が何故 此処に囚われておいでか、お分かりですか?』

ジャーヴィスの問い掛けにまだ温かいパンを一切れ頬張ったトニーは屈託のない笑顔を見せ、すんなりと答えてみせる。

「私がこの世界にとって最恐最悪の“ヴィラン”だからだ。
私は天才だからどんな物でも武器にできる。ガラクタでも、日常品でも、なんでも。だから此処には何も置かないのだろう?私が武器に変えてしまわないように。」

容器の上にではなく、床に直に置かれたパンを口に運び、にこりと微笑むトニーにジャーヴィスは押し黙る。監禁。拘束。見張り。制限。到底人間の扱いとは言い難い状況だが、主人である彼はそれでも笑顔をみせるのだ。不敵ともとれる、自信満々の笑顔で、彼はそれら全てを“受け入れている”。
静寂を割くように、こつこつと靴を鳴り響かせ近づいて来た足音に、トニーは笑顔をさらに深めて足音の主に視線を向けた。革ジャンにジーンズという古臭い私服を纏い、強化硝子の向こう側から、トニーに鋭い視線を向けるスティーブ・ロジャースに、ひらりと手を振ってトニーは愉快そうに唇を動かす。

「今日も此処へお越しとは。私と言う“ヴィラン”がいないと英雄様はお暇なのかな?」

強化硝子越しにトニーを見据えたスティーブは何も応えず、ただ眉を顰め、鋭い視線でトニーの身体に“異常”がない事を確認する。そうして、踵を返し、すぐに室内から出て行くスティーブ。どうやら異常はないと判断したようだ。トニーは最後の一切れのパンを口に押し込み、噛み飲みこんで、チラリと見張りの兵士の1人に視線を向ける。視線が絡み、途端に落ち着きをなくす兵士を楽しく観賞しながら微笑むトニーにジャーヴィスが再び問い掛けた。

『トニー様。彼が何故、毎日 此処に来られるのか、お分かりですか?』

ジャーヴィスの問い掛けにトニーは擽ったそうに喉を鳴らし笑うのだ。

「私が彼にとって最恐の“ヴィラン”だからだ。
キャプテン・アメリカは世界最高のヒーロー。私が此処から逃げ出さないように監視している。毎日な。」

満足そうに微笑むトニーは、頬を紅く染め漸くに視線をトニーから床へと逸らした兵士を「初心だな。」とからかい、ちょっかいを出しはじめる。兵士の手が小刻みに震えるのを確認しながら、トニーは何事もないかのように声に艶を帯させる。

「こっちへ。此処の扉を開いて、私に触れてくれ。触れるくらい出来るだろう?ずっと拘束されたままだから体中が痛むんだ。手で摩ってくれ。それくらいで叱られるような事はないだろう?そう、善意だ。ボランティアと変わらない善意。君は善意で手を伸ばすだけ…」

困惑と下心を含めた期待に表情を歪ませ、ふらりとトニーの傍へと歩み寄って来る兵士。そんな彼の腕を捕まえ、殴り倒した金髪の男性は爽やかな笑顔で「やあ、トニー。」と懐かしむようにトニーに笑顔を向けた。いつの間に見張りの兵士達を倒したのか、彼等から奪った鍵を優雅にまわし、トニーが居る閉鎖空間の扉を開く。

「待たせたかな?」

「嗚呼、待ち侘びた。」

けたたましく非常警報が鳴り響きだすなか、優雅なスーツを着込んだ金髪の男性は拘束されたままのトニーの体を抱き寄せ、ぽんぽんと背中を叩く。手錠で回らない腕を彼の腰に回し、縋り付くように金髪の男性の肩にトニーは頭を擦り寄せた。まるで子供をあやすような仕種で再会を懐かしみ、笑顔を見せた金髪の男性はトニーの手錠を解いて再び微笑む。

『トニー様から離れてください。』

到底機械らしくもない怒気を孕んだ声色でジャーヴィスに警告され、金髪の男性は「抵抗はしない。その必要性すらない。」と言うように両手を挙げてにっこりと爽やかに微笑んでみせる。彼がしたい事は一つだとジャーヴィスが気付いた時には遅かった。拘束を解かれたトニーは駆け出し、笑いながら“此処”から逃げ出してゆく。ジャーヴィスは直ぐさまに接続を切り替え、トニーを追い掛けた。主人を逃がしてはいけないとジャーヴィスを形成するコードがちりちりと焦げるような熱をあげた。

警報を聞き顔色を焦りに変え、駆けて来たスティーブは閉鎖空間にトニーが居ない事に気付き、壁を力任せに殴りトニーの後を追うように駆け出そうとする。そんなスティーブを金髪の男性は嘲るように笑い、警告を発する。

「スティーブ・ロジャース。君の声では無理だよ。君はキャプテン・アメリカ。“ヒーロー”だからね。ヒーローの声は“ヴィラン”には届かない。“ヴィラン”に届く声は、同じ“ヴィラン”だけだ。」

かっと頭に血が上り、スティーブは金髪の男性の胸倉を掴み上げた。首が締まり、苦しい筈だろうに爽やかな笑顔を絶やさない金髪の男性は嬉しそうに眼差しを細めるのだ。

「手を差し出すまでもなかった。トニーの方から此方側へ来てくれたんだからね。」

「君は!」


ふわりと冷たい風が吹き、トニーの柔らかな髪を揺らした。あと一歩。あと一歩後方へと下がればトニーの身体は崖下へと落下する。生身のトニーが落ちれば即死は免れないだろう。それだけの高さはある。先に緑の巨体に引き裂かれ落ちた輸送機が、トニーに“運命”を教えるように崖下で激しく炎上している。トニーは微笑み、いまだ鼻息荒くトニーを睨み据えるハルクに語りかけた。

「ハルク!やはり君はヒーローだ。“ヴィラン”の私が脱走するのを止めに来たのだろう?君は優しいヒーローだ。このまま私を放って居ては、人を殺す兵器を生み出すから此処へ来た。
さて、私を殺すか?」
両手を広げ、煽るようなトニーの言葉にハルクはふんっと鼻息を鳴らした。トニーは瞳と頬を緩め、「私を殺せないか。君は優しいヒーローだな。」と囁けば足を一歩後ろに下げる。ぐらりと揺れ、崖下へと落下したトニーの身体にハルクの咆哮が響き渡る。飛び出して来た赤と金のアーマーが落下するトニーの身体を優しく抱き寄せ、虚ろな眼差しを向けるトニーへと問い掛けた。

『トニー様。私が、私達が何故 貴方を監禁し、拘束してでも、貴方の命を救おうとするかお分かりですか?』

アイアンマンのアーマーを操りながら、酷く憔悴したような声でジャーヴィスに問われ、トニーは小さく息を吐いた。

「私…が…私が…“ヴィラン”だからだ。兵器を生み出す最悪の。人を殺す兵器を生み出す。世界最悪の“ヴィラン”だからだろう?」

『トニー様。』

「……違…う。何故だ?何故 “ヴィラン”の私を救おうとする?私は“ヴィラン”だ。ヒーローに裁かれるべき、“生きていてはいけない”悪の存在だ。」

トニーの手がアイアンマンのフェイスマスクを力なくゆらりと撫でる。疲れきったように、すっかり笑顔をなくしたトニーにジャーヴィスは主人の身体を壊さないよう細心の注意を払いながら抱き締める腕の力を強めた。

『トニー様。貴方は“ヴィラン”ではありません。私達は御自身を“ヴィラン”だと思い込み、何度も死に向かおうとする貴方を救いたいのです。』

「何故?」

『トニー様。貴方を失いたくないのです。貴方を愛しています。心から貴方を。』

「そうか…」と零れた言葉は酷い曖昧さを纏い、トニーは力なく瞼を落とした。硬い鋼鉄の腕に抱かれ、生命の通う腕に託されて、彼は浅い寝息をたてる。柔らかなベッドに拘束され、精密検査を受け、覚醒の震える瞼に気付き、髪を撫でられた事も知らないままトニーはまたゆっくりと瞼を開く。
全面強化硝子で構築された閉鎖空間。其処が彼がいま居る場所。牢獄のようでありながら、牢獄ではない其処には何もない。椅子も。テーブルも。寝具も。食器すらも。トニーが自傷行為をし得るすべての何もかもがだ。彼は天才。だからこそ其処にある物全てを“自身を傷付ける武器”に変えてしまう。狂った彼は、最初の事件となった、大衆が注目するなか自殺行為をはかった笑顔で何度も告げる。「私は世界最恐の“ヴィラン”だ。」と。部屋の外には監視役の男達が常に数人。彼が自殺を図らないようにと、彼を護ろうとトニーから一瞬たりとも目を離さぬように立っている。其処に、今はさらに二人の男性が、強化硝子越しに不安を抱えながらトニーを見据えている。

『おはようございます。トニー様。』

「おはよう。私のジャーヴィス。」

トニー御自慢の人工知能であるジャーヴィスはトニーの覚醒と共に問い掛けを繰り返す。皆が望む“答え”が返ってくるまで。

『トニー様。貴方が何故 此処に囚われておいでか、お分かりですか?』

「私が…
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