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零の音

瀬対ユウキによる【グローランサー シリーズ】中心非公式ファンblogです。

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IRONMAN小説【唇をなぞる】

IRONMAN小説【唇をなぞる】

アイアン主従組。若干腐向け。
映画設定ベースでちらりとお話を聞いた身代わり養子設定社長。
身代わり養子設定をよく知らないままに書いてしまったので、知ってる方には設定違うと思われると思います(ハワードパパは社長を愛してるよとか)が、素人が書いた駄作とご了承頂けると嬉しいです。


『追記を読む(↓)』からどうぞ。




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社交パーティーに向かう車の中で見た光景が私の脳に焼き付いている。
天気のいい日。緑溢れる公園。芝生に座り、家族と食事をする子供。
私と歳のかわらない幼い子供が父親に母親の手作りだろうサンドイッチを渡す。父親は微笑んで子供の頭を撫で、その力強い腕と胸に子供を抱き寄せた。
なんと囁いたのだろうか?唇を動かして息子に言葉を伝えている。
『あ い し て る』
唇の動きを真似て、心の奥底にその言葉をしまい込んだ。
社交パーティーに向かう車という籠の中で、公園の親子を流れる風景に、私は人形のように正装をしてお行儀よく座っていた。


その日、その光景を見た時から私の中にひそんでいた欲求が膨らんだ。
父に頭を撫でられたい。父に抱きしめてもらいたい。父に「愛してる」と言われたい。
私の思考が父の興味をひく事へと向いた。
幸運にも、偶然にもと言うべきか、私には天才的な頭脳があった。
本で読んだ事はすぐに理解出来たし、そこから疑問を抱き、知識を回転させ、新しい真実を発見する事を知った。自分の想像を創造に変えるのが楽しくて、機械を弄る事が大好きになった。他の子供達が出来ない事が、何故出来ないのか理解できないくらいに… 私は生れついての“天才児”だった。
初めは、父の興味を引きたくて、私は自分が創造した機械を父へと見せに行った。他の子達には出来ない事が僕には出来るのだと自慢したかった訳ではない。ただ最初は純粋に父に褒めて欲しかった。
だが、振り向いた父は私と私が造りあげた機械に視線を数度向けて、冷たく言い放った。

「お前は私の息子“トニー・スターク”なのだから、そのくらいの事は出来て当然だ。」

出来て当然。他の子供達ならば褒められる事も、私は褒めてなどもらえなかった。
その理由が何故か分からずベッドの上で泣きじゃくる私を慰めてくれたのは、当時、屋敷で働いていた老執事のエドウィン・ジャーヴィス。この日、生まれてはじめて私は人に頭を撫でられる事を知った。褒められてではなく、慰められただけ。胸に小さな傷が増えた。

ある日、私は父の興味を引きたくて父の部屋に忍び込んだ。父は撮影用のビデオカメラに向かい必死に台詞を考えていた。
仕事が忙しく、あまり屋敷に戻って来ない父が、同じ屋敷内に、手の届く傍にいる事が嬉しくて、私は小さな悪戯を思い付いた。父の造ったエキスポの模型の一部を手に取る。父に私に興味を持って欲しい。それだけの悪戯。

「トニー!それを戻しなさい!」

私の悪戯に気付いた父は私を叱り、何故そんな事をしたのかすらも問いたださないまま、執事に命令して私を別室へと連れて行かせた。「トニー、どうしてそんな子供のような悪戯をしたんだ?」「パパに僕を見て欲しかったから。」1人で呟いた言葉は広い室内に静かに響いた。それからエキスポが終わるまで、私は部屋から出る事を禁じられた。仕事の邪魔になる子はいらないのだと、私の胸にまた1つ小さな傷が増えた。

ある時からは著名人や報道陣が集まる社交パーティーに連れ出される日々だった。そこで父の振る舞いを覚えた。優秀で、饒舌で、天才であり、人の目を引く、私が“トニー・スターク”であるすべて。父に認められたくて、父からの愛情が欲しくて、それはまるで無意識のうちに私のすべてに染み渡っていった。
父の知り合いは口々に「息子さんは貴方にそっくりだ。」と父に語りかけ、父はその都度 安堵したような表情で「私の息子ですから。」と笑顔をみせていた。
世界の人々の注目が私に集まる。けれど、父だけは、父の眼差しだけは、私を見つめていないと私は気付いていた。胸に小さな傷がまた1つ増えた。

爆弾の破片を散りばめられた心臓は、傷だらけの私の心によく似ていた。突き刺されば、後は突き破るだけ。子供心には理解できなかった。


何故、父ハワードは私を抱きしめてくれなかったのだろうか?
何故、父ハワードは私に「愛している」と言ってくれなかったのだろうか?
何故、父ハワードが私に“トニー・スターク”である事を必要としたのか?


「…今なら、分かる…。」

漏らした声はひどく掠れ、痛む喉から知らず知らずのうちに自分が声を荒げていたのだと気付く。びりびりと痛む右腕のシャツから滲む血の色に何処でぶつけたのか、それすらも覚えていない。

『トニー様…。』

心配そうに呼び掛けてくるジャーヴィスの声に、私は強く握り絞めていた胸元のシャツから手を離し、自嘲しながら額の汗を拭った。

私は…ハワード・スターク、マリア・スターク夫妻の実子ではなく、親も名も分からない養子。
夫妻の実子である本物の“トニー・スターク”を護る為の、身代わり人形。
知った事実が私の心を突き破る。
ジャーヴィスに検査させた結果が残酷にも父と血の繋がりがない事を証明している。私が愛されたかったのは誰だったのだろうか?
父が頑なに私に“トニー・スターク”であれとしたのは、身代わりである私に危険を向け、実子を護る為だったのだろうか?
父が滅多に屋敷に戻らないのは、仕事で忙しい為だけではなく、実子の傍へいたからなのだろうか?
では私は?私を形成する“トニー・スターク”は一体なんなのだろうか?
振り向く筈のない幻影を追い掛け続けた私は?

走り続けた道が足元から崩れ落ちる感覚。ぐらりと揺れた視界に『トニー様!』とジャーヴィスの悲痛な声が届き、私は床の足を踏ん張り、ぎりぎりの精神を奮い立たせた。
震えがとまらない指を、私を心配しているのかダミーがアームで優しく掴んでくる。

「私の…家族は…」

暗くなりそうな視界に、闇を恐れて縋り付くようにユーの機体を抱き寄せる。走馬灯のようによぎる記憶達を振り払おうと頭を振り、瞳を閉ざして、痛む心をごまかすように奥歯と顳みに鈍い痛みを走らせる。
頭の中を駆け巡る自己否定をすべて棄てて生きられたならどんなに楽だろうか、傷付いた心をすべて棄てて世界を鎖せたならどんなに幸福だろうか?
それでも、ヒーローである、アイアンマンである私に逃げる道は赦されない。
震えながらゆるく開いた瞼。視界に入った碧いホログラムに私の瞳が熱く滲んだ。

『トニー様。トニー様が何者であろうと私達はトニー様の家族です。
貴方を抱きしめる腕がなくとも、貴方の髪を撫でる指がなくとも…私は、私達は此処に存在するトニー様を愛しております。』

ふわりと噴いた風にジャーヴィスに頬と頭を撫でられたような錯覚に陥る。室内に広がったホログラムの碧い公園は、あの日、車内から見た光景のように暖かな芝生に涼しげな木々が立ち並んでいた。小さなランチボックスの傍には不格好な本物のサンドイッチと、湯気のあがるコーヒーが2つと、オレンジジュースの注がれた小さな子供用コップが2つ。
ダミーが不器用なアームで掴んだサンドイッチを一生懸命に私の口元に運んで来て、ユーのアームがあやすように私の背中を優しく撫でた。

『世界のすべてより貴方を愛しております。トニー様。』

突き破られた心。傷だらけのそこにじわりじわりと染み込んでゆく愛情。
記憶にある唇の動きをなぞりながら、私は燃え尽きて熱くなった息を胸から吐き出した。

「…あい…愛して…る…。」

ぽたぽたと床に落ちた涙さえも撫でるように、包み込まれた暖かな室温と、優しい機体に抱かれて私は“トニー・スターク”らしくもなく不格好に泣き叫んだ。

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