FC2ブログ

零の音

瀬対ユウキによる【グローランサー シリーズ】中心非公式ファンblogです。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

AVENGERS小説【我、知らず】

AVENGERS小説【我、知らず】

キャプテンを避ける社長。
キャプテン→社長と見せ掛けてのキャプテン→社長←博士です。
風邪をひくたびにキャプトニを書いている気がするのはきっと気のせいではない筈。(笑)

『追記を読む(↓)』からどうぞ。




-----------------








~Side Steve~




ヘリキャリアでの作戦会議中。
腕を組みながら流水のようにとどまる事なく理解不能な言葉を話す“天才”が、ふいと視線を外して僕の視界から姿を消した。
それはごくごく自然な流れで、最初は違和感を感じなかったけれど、それが何度も続いて僕は漸くにして気が付いた。僕は彼に避けられていると。


「スターク。」

ヘリキャリア内の曲がり角でバナー博士と会話をしながら優雅に歩く彼の姿を見付けて名を呼んだ。しかし、ちらりとこちらを流し目で確認したスタークはまるで聞こえなかったかのように歩いて先へと行ってしまう。
バナー博士の「呼んでるみたいだよ?」の言葉にも無視を決め込んだスタークの背中に、僕はしばし立ち尽くし呆然としてしまった。

僕は彼に嫌われるような事をしてしまったのだろうか。
型破りな性格の彼にはついつい日頃から口煩くしてしまう。それがきっかけで喧嘩のような口論になる事もある。けれども、それは僕がスタークの事を心配しているからだ。
彼は昔の戦友の1人息子で、今は僕の仲間だから。


「ふんっ!」

苛立ちをそのままに殴ったサンドバッグが激しい衝突音を響かせる。
思っていたよりもずっと強く打ち付けてしまい、吹き飛んだサンドバッグは壁にぶつかった衝撃で布地が裂けて砂を零した。
まるで時間の経過のようにとどまらず床に広がってゆく砂。
溜め息を吐き出して僕はテーピングを解きながら呟いた。

「どうして?」


あれからあからさまにスタークに避けられ続けている。
気付いた事は“彼は僕の視界に入りたくない”ようだった。
姿も見せたくないのだろう。最近ではヘリキャリアにすら姿を現さない。会えなければ当然避けられている理由も問いただせない。
だから僕は最終手段に出た。


「それで?どうして此処で僕が出てくるのかな?」

困るよと言わんばかりに眉を下げてバナー博士が告げてくる。
それでも僕に温かな紅茶を煎れて差し出してくれるから博士は優しい。

「すまない、博士。
スタークは博士と仲がいいだろう?
此処なら彼もきっと来ると思って。」

紅茶を口に運べばその熱さに舌を火傷してしまい、僅かに唇を歪ませながらに告げる。バナー博士は目頭を指で押さえ込んでぴくりと口端を動かし溜息を吐き出した。

「トニーは来ないと思うよ。
例え来てもすぐに帰ってしまうだろうね。」

ソファーにどかりと背中を預け、緩やかに手を組んだバナー博士は僕を見据えてそう告げてくる。
断言された言葉と威圧感に直感で気付いた。

「僕が此処にいるからか?
博士は、スタークが僕を避けている理由を?」

博士は知っているとは言わない。
ただ僕を見据えて、ぴりりと肌に伝わってくる威圧感から、博士が何かに憤りを感じていると伝えていた。

「何気ない行為が、知らずに誰かを傷付ける事もある。」

ソファーから立ち上がり、硝子コップにほんの少しの水を入れてきたバナー博士は小さく苦笑して、煎れたての僕の紅茶に水を注いだ。
銀色のスプーンが紅茶と水をくるりと混ぜ合わせてゆく。

「ごめん。君の紅茶はわざと熱くしたんだ。」

何故?とは問えなかった。
しばらく舌のうえがひりひりと痛んだが、そんな火傷はすぐに治ってしまう。それよりも痛んだのは胸のずっと奥だった。

「僕は無意識にスタークを傷付けた?」

問い掛ければバナー博士はまた1つ溜息を吐き出す。鈍感な僕に呆れているのか、スタークを心配しているのか、分からない。

「トニーが君を避けてるのは、君を過去に縛り付けないようにする為だよ。
時は流れてしまったけれど、君は必死に新しい時代を生きようとしていた。
だからトニーも君に協力して新しい世界をみせてまわっていた筈だ。」

博士に言われてはっと気付く。
戦時中では願っても見る事が叶わなかった平和な景色。進化した技術。新しい街並み。未知だった食事。美しい芸術。
S.H.I.E.L.D.の任務がなく、完全な休みな時にふらりと現れ僕を強引に“現在の世界”へと連れ出したスターク。その時に見せていた笑顔を僕はまだしっかりと思い浮かべる事ができる。
いつも突然だと文句を言いながらも、僕は彼と一緒にいる時間が楽しかった。

そうして漸く僕は気付く。
無意識に。そう、あれはヘリキャリアの甲板で、太陽が沈む空を見据えて僕は言ってしまったんだ。

「君と一緒にいると過去に戻ったような気がするよ。」

その瞬間、スタークの表情が陰った事を夕日による錯覚だと思っていた。
悔しさと切なさを滲ませたように薄く笑ったスターク。
彼はどう思っただろうか?

「トニーは…」

バナー博士の眼差しが僕を避けて組んだ指に落ちる。一瞬の間。それだけで重苦しい空気が僕たちを包み込む。

「こう、告げていた。
『キャプテンには私が父ハワードにしか見えていなかったようだ。
未来を見据えようとさせたが私では逆効果だったな。
今、彼を過去に縛り付けているのは私だ。私の存在をなくせば彼は未来を見据えるだろう。』
そう、僕に教えてくれたんだ。」

重く残酷に落とされた声に僕は顔をあげる。
博士の唇が淡々と告げているようで、それ故に僕の心は悲壮感に包まれた。
無意識に僕はスタークを傷付けた。

「僕はスタークをハワードと重ねた訳じゃない。
スタークと一緒にいる時間が楽しかったから…」

不快感を露にするように、視線を外され、はああと強く吐き出された溜め息。言葉が尻切れ調子になる。バナー博士は息を吐き出した下唇を薄く噛み締めて僕を見据えた。

「この話はやめよう。
僕は精神科医ではないし、専門家でもない。
それに、あまり気が長い方ではないんだ。」

微笑みながらもぴくりと動いた右瞼に博士の怒りを感じて僕はこくりと頷く事しか出来なかった。
すっかり冷めてしまった紅茶をヒリヒリと痛む喉に流し込んで僕はソファーから立ち上がる。

「今日は帰るよ。お邪魔をしてしまってすまない。博士。」

「嗚呼、気にしないで。」

にこりと微笑んだ博士はいつもの温厚な博士で、その事に少し安堵しながら僕は建物の外へと出た。
スタークには会えなかったけれど、僕の無意識な言葉がスタークを傷付けたと分かっただけでも大収穫だったと思いたい。
頬を突き刺すような冷たい空気。強い風にひらりと揺れ流れた木葉に、僕を避け続けるスタークを重ねて僕はそっと手を伸ばした。




~Side Banner~



愛おしそうに伸ばされた手を僕は室内から静かに眺めていた。トニーと重ねたのだろう木葉を、スティーブが優しく掴んだ瞬間にぱきりと鈍い音をたてて手にしていたマグカップが割れた。
破片で切れた指から真っ赤な血が滴り落ちるが、僕は慌てずに屈み込んだ。

「だから、何気ない行為が知らずに誰かを傷付ける事もあると言ったんだ。」

僕の声は何処までも暗く濁っていただろう。スティーブも僕と同じなのだと確信を持てば唇に薄笑いさえ浮かぶ。
彼と同列の存在ではいたくない。彼には負けたくないと思う程に、僕はトニー・スタークに“特別な愛”を抱いている。
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

管理人にだけ読んでもらう

HOME

カウンター

プロフィール

瀬対ユウキ

Author:瀬対ユウキ

最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
検索フォーム

リンク
ブロとも申請フォーム
QRコード

QRコード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。