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零の音

瀬対ユウキによる【グローランサー シリーズ】中心非公式ファンblogです。

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AVENGERS小説【星が瞬く夜[0~zero~]】

AVENGERS小説【星が瞬く夜[0~zero~]】

星が瞬く夜シリーズのプロローグ。
シリーズを読んでなくても読めますが“ネタバレ”含みますのでご注意下さい。
ジャトニ、バナトニ風味で愛され社長。

『追記を読む(↓)』からどうぞ。



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ふわりと鼻腔を擽る優しい匂いが届いてトニー・スタークは重い瞼を持ち上げた。
心臓の破片除去手術して間もなく、気怠く自由の利かない体を柔らかなアンティークソファーに預けている内に、ついウトウトと夢の世界へと船を漕いでしまったらしい。
重い瞼を手で擦り、白い壁を隔てたキッチンへと視線を向ければ顔を出したブルース・バナーがトニーの様子に気付きにっこりと微笑んだ。

「やあ。起きたかい?
野菜スープを作っておいたのだけれど、食べれそうかな?」

空っぽの胃だが空腹の痛みはなく、咽が劇薬でも吸い込んでしまったかのように痛む。
声を出して返事をしようとしたが掠れた呼吸音だけを響かせるのでトニーは諦めてこくんとだけ頷いた。
バナーに続いてキッチンからキュイキュイと音を鳴らし、ダミーとユーも現れる。
テーブルの上に銀色スプーンと白いシチュー皿を運び始めた2体の“夕食の準備”が終わるのは何時だろうか?
カチャカチャと音を鳴らしながら透明なグラスをテーブルに置こうとして、端にガチャンとぶつけグラスを粉々に割ってゆく。

「僕が片付けるよ。
トニー、薬は此処に置いておくから、食後にきちんと飲んで。
熱は?下がった?」

近寄って来たバナーはソファーに膝を掛けてトニーの額に触れる。
じわりと伝わるまだ熱い体温にバナーは唇を歪ませながら、自身が羽織っていた黒いガウンを脱ぎ、トニーの体を包み込んだ。

『S.H.I.E.L.D.との連携作戦を認識しました。
トニー様、お加減は?』

空中から響いた声にトニーは無言のまま小さく眉を上げ、ぽすりとソファーに頭を投げ出す。
体調はあまり良くないらしく、無防備に身を投げ出したトニーにキャプテン・アメリカの衣装を纏ったスティーブ・ロジャースはつかつかと歩み寄りトニーの耳に指示用の通信機械を差し込んだ。

『キャプテン・アメリカへ、トニー様からの伝言です。
「もう少し優しくしろ。
加減を知らないのか?
病人の扱い方も分からないようじゃあ女性にモテないぞ。
嗚呼、君はマスクで顔を隠すから女性へのアプローチは必要ないのか?
それとも崇高な精神を持つキャプテンは童貞でないといけないルールでも?」との事です。』

「喉が掠れても君のジョークが聞けるとは思わなかった。」

眉を上げながら苦笑するスティーブにトニーの手がひらりと動く。

『「嗚呼、この喉じゃあ碌に会話も出来やしない。実に残念だ。」
失礼。これはトニー様の独り言でした。』

機械を通しトニーの意思を代弁するジャーヴィスが言葉を漏らせば、トニーはむすりと唇を尖らせ拗ねてみせる。
まるで幼子のようなその様子にスティーブとバナーは堪らず噴き出し笑い出した。
室内時計の針が8時ちょうどを示し、室内にピピピと作戦開始時刻を知らせる音が響いた。
蝋燭を吹き消すようにふっと落ちた室内の灯にトニーは眉間を寄せて頭を押さえた。
S.H.I.E.L.D.が掴んだ情報が正しければ、今から数時間以内に大量の敵がトニーを殺しに此処へやって来るだろう。
心臓手術で体が弱り、アイアンマンのスーツを纏えないトニーには苦々しくも護られる立場にならなければならなかった。

「作戦開始時刻だ。
僕達はバートンと一緒にクインジェットに乗り込んで離れた位置から見張ってる。
ナターシャは此処で待機しているから、何かあればナターシャを頼る事。いいね?」

薄暗くなった室内ではスティーブの顔は見えなかったがトニーはひらりと手を動かして、そうしてカラカラに掠れた声を振り絞った。

「作戦開始ね。
キャプテン…前に言った事を、覚えてるか?
我々は、兵隊じゃない…。
だから、君に頼むよ。
私の身代わりを、私の代わりに、護ってくれ。」

無理に声を出したせいでごほごほと咳込むトニー。
そんなトニーの背中をゆるゆると撫でながらバナーは小さく溜め息を吐き出した。
トニーには今回の身代わり作戦は伝えていなかった筈だとスティーブが拳を握れば、そんな事はお見通しだとトニーが唇だけで笑ってみせる。
トニーの掠れた喉が喘息のようにひゅっひゅっと渇いた呼吸音を鳴らして、バナーはトニーの口元にコップに入った水を差し出した。
バナーに支えられながらこくんと喉が水を流し込んだ動きをすれば、スティーブは眉間を寄せ扉へと向かい歩き出す。
自分達が何時までも此処に留まっていてはトニーが戦闘に巻き込まれてしまう。
トニーを護る為に身代わりが目的地まで敵を引き連れる手筈なのだから。
“仲間を護る為の任務”と“仲間の頼み”と、どちらを優先すべきなのか掛けた天秤が揺れ動きながら、スティーブは薄暗い室内から出て行った。

「彼は真摯に真面目だから、あんな事を言ったら迷うんじゃないかな?」

床に落ちた硝子の破片を慎重に拾い集めながらバナーが言葉を漏らす。
『キャプテンなら迷わないさ。』と、自身の声をジャーヴィスに代弁さするトニーはソファーから硝子を拾おうと指を伸ばし、その手をバナーに優しく握られ制止される。

「無茶はしないと約束を。」

『平気だ。』

「それは約束にはならない。
君が無茶をするのなら、僕もハルクとなって戦う。」

睨み据えるような眼差しで囁くバナーの言葉にトニーは唇を小さく緩め、掠れた声で「ジャーヴィス。」と執事の名前を呼ぶ。
途端にそこに現れたレッドとゴールドに彩られたアイアンマンのスーツにトニーは頬を綻ばせてにっと微笑む。

『トニー様は私がこのアーマーでお護り致します。
戦闘実用段階にはありませんが、トニー様の“盾”となる事は可能だと判断します。』

ジャーヴィスの言葉と共に食器を運んでいたダミーとユーがキュッキュッと鳴きだして、バナーは彼等の方へと振り向く。
『僕らもトニー様を護るんだ!』と言わんばかりに工具をアームで掴みぶんぶんと振り回すダミーとユー。
今にも棚にぶつかり壊しそうなその勢いにトニーは眉間に皺を刻み、肩を竦めたが、バナーは安堵したように「頼もしいね。」と微笑んだ。

『私達はトニー様の“自慢の息子”ですから。』

キュイキュイと鳴り、工具を翳したダミーとユーはまるで天にムジョルニアを翳したソーのように気高く誇らしげだった。

「今のは君の言葉?
それともジャーヴィスの?」

問い掛けたバナー。
肌触りが気に入ったのかバナーに羽織らされた黒いガウンにもそもそと手を差し入れ着込んだトニーはそれだけで体力を消耗した様子で再び気怠げにソファーへとぽすんと頭を投げ出し、「さあ?どっちだろうな?」と言わんばかりに優しく微笑んだ。



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