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零の音

瀬対ユウキによる【グローランサー シリーズ】中心非公式ファンblogです。

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AVENGERS小説【星が瞬く夜[3]】

AVENGERS小説【星が瞬く夜[3]】

記憶喪失のお話。書いてしまった第3話。
キャプテンが登場します。
この物語にはオリジナルキャラが出て来てますので苦手な方はご注意下さい!


『追記を読む(↓)』からどうぞ。




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…あたたかい…。
頬にぺちぺちと触れてくる感触は何処か優しくて、喪失した記憶と心の空白を埋めてくれるような気がした。

「スターク!
起きろ、スターク!
…トニー!」

真っ暗闇の中、必死の呼び声が僕の耳に届く。
爽やかで力強く、透き通る青空のような若い男性の声。
嗚呼、これも…聞いた事がある。

ふと意識を取り戻し、瞼を持ち上げれば、眉間に皺を寄せて心配そうに僕の顔を覗き込むアメリカ国旗、星条旗をモチーフにしたコスチュームの男がいた。


『窮地に陥った時、人を突き動かすのは“信念”だとしよう。
アンソニー・エドワード・スタークの“信念”はこうだ。
1.“彼”は自分がやるべき事を決めている。
2.“彼”はそれが正しいと信じている。
3.“彼”は護ると決めている。
4.“彼”は、それが自身を傷付ける行為であったとしても躊躇いを持たない。

やるべき事は決まった。』


安堵したように唇を綻ばせたアメリカ国旗コスチュームの男性に支えられながら、ゆっくりと身を起こし周囲を見渡せばヘリの操縦席だろう鉄の残骸がぐしゃりと捩曲がり壁に突き刺さっていた。
その光景に反射してヘリから銃撃された記憶が蘇り、無意識に手がかたかたと震え出す。
唇を押さえ、吐き出す物も残っていないだろう胃液の逆流を押さえる。
いまさらな恐怖心が僕を支配しようとする。

「ト…、アンソニー?」

アメリカ国旗コスチュームの男に戸惑ったように声を掛けられ視線を向ける。
妙なコスチュームを着ている事を除けば、間違いなくモテるだろう体格のいい美形の男。
何となくの感覚だ。この男も知っているような気がした。
思い出せない記憶に脳が悲鳴をあげそうになる。
必死に手を伸ばすのにさらりと記憶が掠め去ってゆく、それが次第に耐え切れなくなり頭を押さえながらに呻けば男の手が僕の背中をゆるりと優しく撫でた。

「無理に思い出さない方がいい。
大丈夫だ。君の事を知っている僕たちが一緒なんだ。
自然と記憶も元に戻る。」

ゆるゆると背中を撫でられる掌の感触に僕は張り詰めていた息を吐き出す。
あやうく涙腺まで緩み泣きそうになりながら、感謝の気持ちで男の胸を叩けば男は満足そうに微笑みを浮かべた。

「記憶を戻すよりも先にまずは此処から脱出しよう。
スター…嗚呼、アンソニーと呼んだ方がいいか?それともトニー?」

記憶喪失の僕の呼び方に戸惑っているらしい彼は困ったように眉間に皺を刻んで問い掛けてくる。
それが可笑しくて僕は唇に笑みを浮かべながら問い掛けた。

「君の名前は?」

「スティーブだ。スティーブ・ロジャース。
キャプテン・アメリカとも呼ばれている。」

“キャプテン・アメリカ”?
だから服が星条旗のデザインなのか?
スティーブの呼び名が可笑しくて思わず噴き出し腹を抱えて笑ってしまう。
僕の様子にスティーブは顔をしかつめらせたけれど、嗚呼、引き出せない記憶の中にキャプテン・アメリカのファンだった誰かが居たような気がして、記憶を失って初めて笑えたような気がして、僕は少しだけ嬉しかった。

「はじめまして、キャプテン。
僕の事は好きに呼んでくれて構わない。
アンソニーでも、スタークでも、トニーでもキャプテンが好きなように呼んでくれ。」

ひとしきりに笑い、右手を差し出して握手を求めながらに告げればスティーブの眼差しが優しく緩んだ。
彼は信頼出来る。
強く握手を交わし、手を離せば、スティーブはその手をそのまま耳に宛がった。

「…嗚呼、こっちは無事だ。
彼なら僕と一緒にいるよ。
…トニーと?嗚呼、分かっているが……了解だ。
彼と一緒に脱出する。
…トニーと一緒に、これで満足か?」

無線で話していたらしいスティーブは一瞬だけ落胆の表情を見せたけれど、すぐに表情を引き締めなおして僕を見る。
決意を秘めた眼差しに何を言われるのか見当はついていた。

「トニー…」

「今の無線はロマノフ嬢から?
君と僕で此処から脱出するんだろう?
ルートの変更はなし?正面から?」

問い掛ければスティーブは僕の肩をぽんっと叩いて「僕が君を護る。離れるな。」と告げ、瓦礫と砂埃でぐしゃぐしゃになった室内を歩き出した。
その瞬間、スティーブの拳が固く強く握られた事に僕は気付いていた。

僕も歩き出そうと足を踏み出せば砂まみれになった床に落ちた何かを踏んでしまいぐしゃりと音が響く。
気になって足をどければ、棚から落ちたんだろう1枚の写真が床に落ちていた。

砂埃で薄く汚れた写真を着ていたシャツの端で拭えば、そこに写る少年の姿に僕は「嗚呼…。」と溜め息を吐き出した。
随分と若いけれど写真に写っているのはこの屋敷の主だろう、隣に佇む長身の男に信頼の表情を向けている。
顔が似ている訳ではないから親子ではないのだろう。
しかし親子ほど歳の離れた2人のその写真に頭の中で何かが弾けた。

広がる砂漠。いくつもの書類。ジェリコミサイル。かこむ報道陣。眼帯の男。彼が何かを語る。
フラッシュバックのように駆け巡る光景。

「…いつもお前の尻拭いばかりをさせられてきた…。」

蘇った言葉をそのまま声に出せば心臓を鷲掴みにされたような痛みが走る。
どくどくと心臓が痛み、目頭が熱くなり視界が歪む。

「…オ…オバ…ディ…」

「トニー!」

スティーブに呼ばれ僕ははっと気が付いた。
呼吸が辛く、悲しい。何処までも…。
「大丈夫か?」と問い掛けてきたスティーブに「大丈夫だ。」と告げ、握り締めてしまった写真をそっと元の位置に戻した。
額から流れる冷や汗を袖で拭えば血の混じった汗が白いシャツにじわりと染みる。

敵の狙いは僕だ。
僕のせいで崩壊してしまった屋敷。
逃げていいのだろうか?このまま?
見て見ぬ振りをするのか?
誰かがこの屋敷には住んでいたんじゃないのか?

最初に出会った男性の存在を思い出せば、心配するスティーブの肩を僕は思いっきりに掴んだ。

「ダメだ!此処にはまだ住人がいる!
彼と、他にも誰かが居た筈だ!話し声が聞こえたんだ!
彼らを放っておく訳にはいかない!
スティーブ、彼らを捜しに行こう!」

僕の訴えにスティーブの眼差しが戸惑いを纏った。
迷っているのだと気付いたから僕はキャプテンの胸倉を掴み声を張り上げた。

「迷うな!!!君は“キャプテン”なんだろう!!?
キャプテンなら僕だけじゃなくてみんなを護れ!!!」

僕の気迫に押されたのか眉間を寄せたスティーブは決意を固めたように僕の腕を掴み下ろさせた。

「命令に従うのが軍人で、任務を全うするのがS.H.I.E.L.D.のエージェントだ。」

スティーブの言葉に失望して僕はスティーブから手を振り払った。
もう宛にはしない。僕1人で戦えるとは到底思えないけれど、彼らの狙いが僕だと言うのなら、誰かを救えるかもしれない。
無理に走り、体を床に打ち付けたせいで足も全身も痛む。
けれど行くしかないと僕は部屋の中にある鉄パイプを掴み、足を引きずりながら歩き出した。

「だが、トニー・スタークは『我々は軍人じゃない』と言ったんだ。
だから僕は命令も任務も放棄する。」

僕の背中にスティーブの力強い声が届いて僕は立ち止まる。
右手に盾を持ち直し、僕の隣に立った男は誇らしい程に勇敢で立派なキャプテン・アメリカだった。






バラバラバラバラと銃声音が鳴り響く。
心強いパートナーの右腕の金属に庇われながら、床下の鉄骨が歪みすっかり軋んだ廊下を駆け抜ける。
物影に潜み、壁に背を張り付け、呼吸を整える。

「怪我は…」

「ない。」

心配する言葉を単語で遮り、汗だくの額を掌で拭う。
額が熱い?
触れた額が熱を放ち、呼吸が苦しく関節の節々が痛む理由にやっと気が付いた。
頭が朦朧とする理由もこれかと気付けば、なんとか呼吸だけでも整えようと胸元を摩る。
そこに触れた瞬間に感じた違和感。
胸元に視線を落とせば黒いシャツから血が溢れ流れているような錯覚に見舞われた。

これは幻覚だ。
私は撃たれていない。

瞼を強く閉じ、念じながら瞳を開けばそこに血の滲みなどまったく見受けられず、全身の力が抜けそうな程に安堵する。
乱れた呼吸を落ち着かせながら視線を床に向ければ、足元にこつんとワインの瓶がぶつかった。
覚えのあるワインの瓶に、黒い液体がたぷりと揺れる。

「火炎瓶だ。」

呟けばこちらに近付いてくる敵の足音。
此処で火炎瓶を使わない手はない。
体を支えながら隣に立つ彼に視線で合図を送り、物影から火炎瓶を放り投げる。

火炎瓶の蓋をしていた布に火はつけていないが、上手く燃え広がるだろう。
パートナーの右手から放たれた金属が回転して廊下の電球を叩き落とす。
割れた瓶とちぎれた電気コード、バチリと散った火花は敵の頭上で燃え盛る炎を作った。
悲鳴を上げながら転がる敵を視覚に捉えて走り出す。

「奥へ!」

背中を支えられながら駆け抜けて、ダイニングルームを突き進む。
倒れた棚の隙間から手を伸ばし塞がれたキッチンの扉をガンガンと荒く叩いた。

「此処にいるな?」

絶え絶えの声で問い掛ければキッチンの中からカンカンッと金属を打つ返事が届いた。
無事に安堵しながら、倒れた棚を持ち上げ支えてもらい、壊れたキッチンの扉へ持っていたペールを打ち付ける。

「退いてろ!」

力いっぱいにペールを打ち込めばメキメキと音を立てて扉は次第に大きな穴を開けてゆく。
腕が入る程の穴を漸く開けて右腕を差し込み伸ばせば、扉の破片で切れたらしい、血が滲む指先を小さな手にぎゅうっと握られた。

「大丈夫だな?
いい子だ。すぐに助ける。待ってろ。」

絶え絶えの掠れ声で伝えればドンッと建物が揺れた衝撃で手が離れる。

「スターク!」

耳に届いたスティーブの叫び声。
振り向けばいつの間にかダイニングルームにまで侵入してきていた敵の銃口が私に向けられていた。
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