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零の音

瀬対ユウキによる【グローランサー シリーズ】中心非公式ファンblogです。

オリジナル推理小説【i'll be there…】

ORIGINAL推理小説【i'll be there…】

オリジナル推理小説です。
謎解きトリックは恐らく簡単です。内容に期待はしないで下さい。(笑)
第18話。


興味のある方のみ『追記を読む(↓)』からどうぞ。





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かちゃっ。

夢魔さんについて駆け出した途端に廊下へと続く扉のドアノブが繊細な音を立てて僕らは咄嗟に足を止めた。
忘れたように息を止めて、僕らの視線が扉へと集まる。
遠慮気味に開いた片方の扉から紅い帽子が覗いた。
まるで童話の赤頭巾みたいな紅い帽子。

「新山さん…?」

緩やかな甘栗色の髪が帽子についているリボンと一緒にふわりと揺れた。
迷子になってしまった子供のように今にも泣き出してしまいそうな震える声で扉からこちらを覗いてきた少女…リボンの位置が左だから美夜さんだ、に僕は安堵の息を吐き出した。
美夜さん、大丈夫だったんだ。
新山さんが駆け出して膝を床について美夜さんの体を抱き寄せる。
美夜さんは驚いたようだったけれどすぐに新山さんの体に縋り付いていた。

「美夜ちゃん、無事だったんですね!
良かったあ!」

胸の前で手をぽんっと叩いて嬉しそうに話した佐藤さんに、夢魔さんと藤原さんも唇に小さく微笑みを浮かべた。
美依さんは一緒じゃないのかな?
美夜さんに聞いてみようと思って美夜さんの傍に足を進めようとすれば真山さんの右手が制止するように静かに僕の腕に触れた。
振り向けば真山さんは緊張感を纏った真剣な眼差しを向けて僕にぺこりと小さく頭を下げた。
二人の再会の邪魔をしないであげて下さいとか、そんな暖かな表情ではなくて胸の内に暗い不安が渦巻いた。
真山さんの足が動く。
数歩分だけ美夜さんに近付いて、真山さんは胸に手をあてて頭を深く下げた。

「失礼致します。
美夜様はご一緒ではございませんか?
美依様。」

真山さんの言葉に美夜さん…違う?彼女は美依さん?、の表情がみるみる強張ってゆく。
まるで恐怖に支配されてしまったみたいに震え出した体が新山さんの驚いたような眼差しを受けた。

「美依ちゃん?」

佐藤さんが問い掛けると美依さんは必死にぶんぶんと首を横に振った。
激しく動く髪と頭巾のような帽子の間からひらりと紅いリボンが落ちる。

「違いますわ!
私は美夜ですの!」

美依さん?美夜さん?
僕にはどっちなのか区別がつかない彼女の言葉に夢魔さんも藤原さんも佐藤さんもただ黙って彼女を見ていた。
真山さんだけが確信を得ているように唇を動かしてゆく。

「失礼を致しました。
ですが、私はお二人がお生まれになった時よりお二人の容姿を覚えております。
例えリボンの位置が変わろうとも、お二人を見間違える事はございません。」

真山さんの言葉に彼女は耐え切れなくなった表情で新山さんに強く抱き着いた。
まるで悪戯がばれてしまった子供みたいに…ううん、違う。
彼女は何かから逃げようとしているかのように。
新山さんの腕が彼女の体に回って、落ち着かせてあげるように白い手が彼女の背中を優しくさすった。

「……美夜が…お返事してくれませんの。」

新山さんにぎゅっと抱き着いた彼女…美依さんだ、が消えてしまいそうな声で話し出す。
新山さんの表情が一瞬で曇って不安を噛み殺すように唇を小さく噛んだ。

「地震がおこって、私 怖くなって、美依の…美夜がいる私のお部屋に行きましたの。
でも、美夜がお返事をしてくれなくて、私…私…!」

振り絞った声が大食堂の中に消えてしまう。
どうして美依さんと美夜さんは入れ代わりなんてしたのだろう?
その理由をあの時、大食堂から出る時に美依さんは教えてくれようとしていたのかもしれない。
声を掛けてあげれば良かったと後悔する。

「とにかくだ。
君は美依さんで、美夜さんは君の…美依さんの部屋にいるんだね?
そして声を掛けても返事がない。」

胸元にある銀色の猫をゆるりと撫でて夢魔さんが確認する。
美依さんはこくんと頷くと「ごめんなさい。」と小さく呟いた。
夢魔さんは僅かな苦笑で返すと視線をすっと動かした。
夢魔さんの涼やかな瞳が僕を見つめてくる。

「雪君、おいで。
美依さんの部屋だ。」

右手の人差し指でくいくいっと呼ばれて…それはまるで猫に対してしているみたいで、僕は少しだけ戸惑った。
どうして夢魔さんは僕を呼ぶのだろう?
そう思ってしまうのは、そこに…美依さんの部屋に一つの不安があるからだと思う。
数時間前に見た異様な光景が頭を過ぎって、ぞくりと体の芯に悪寒が走る。

「美夜さんには部屋に入ったら鍵を掛けるように言っておいたからね。
もし鍵を開けるとなったらマスターキーがいる。」

「あっ。」

僕は思わず首からさげていたマスターキーに手を触れていた。
そうだ。僕がマスターキーを持っているんだ。
それに…もし美夜さんに何かあったなら助けてあげないと!

僕は覚悟を決めて夢魔さんの隣に駆け出す。
途中で右腕に誰かの手が触れて僕は立ち止まって振り向いた。
長い髪がさらりと揺れる。
新山さんの手だ。
新山さんは抱きしめていた美依さんの体を佐藤さんに預けると、強い眼差しで僕を見つめてきた。
言葉がなくても分かる。
「私も行きます。」
新山さんの無言の言葉に僕は出来るかぎり微笑んでこくんと頷いた。
そうでなければ心を覆う不安で心が折れてしまいそうだったから。

「藤原さんも美依様と佐藤さんと一緒に此処にいて下さい。」

野中さんの死体を見て取り乱した藤原さんへの気遣いなのかな?
そう話した真山さんに藤原さんは気に喰わないといった表情を見せながらもこくんと頷いた。

きっと大丈夫。
美依さんも無事だったのだから、きっと美夜さんも…。

夢魔さんの手に押されて大食堂の扉が重々しい音を立てて開く。
視界に入ったマサキさんの部屋から届かないはずの死の臭いが届いた気がした。





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